第2話 俺は女好き


 俺のことなどどうでもいい、と言っておきながら、少し過去のことを話さなければならない。

 いや、ほんとに自分語りなんて好きじゃないし、誰かの興味を惹くとも思えない。

 しかし、俺が自分の今までを思い浮かべ、そしてこれからの生き方を考える時、どうしても外せないことがあるんだ。


 理想の女の子について。その原点となった女の子について。


 その前に、もうひとつ言っておかなければならない。

 俺は女好きだ。

 いや、ちょっと語弊があるな。俺は女性が好きだ。

 まだ違う。

 女性を見るのが好きだ。女性を崇めていると言ってもいい。


 俺にとって、女性は永遠の謎であり、神聖なるものであり、美の象徴だ。

 触れたいとか、付き合いたいとか、やりたいとか、自分のものにしたいなどとは思わない。思うことさえおこがましい。

 ただそこにいてくれるだけでいい。生きて、動いて、それを眺めていられればそれで満足だ。


 ただし、それには条件がある。厳格で厳粛な条件がある。

 その条件に適った女性は、今まで一人しかいないが。


 どうだ、俺ってすごくキモイだろう。

 その自覚はある。


 しかし、俺はこの美意識を気に入ってるし、曲げるつもりもない。

 俺にとってすごく大切なもので、俺という人間の核だとさえ思っている。

 そしてこの美意識に正直に生きたい。

 そこに俺の人生のビジョンが見えてくるはずだから。



 そんな理想の女性像の原点になった女の子は、佐々原ささむら雪音ゆきねと言った。

 名前からしてなんと可憐じゃないか。


 その子は、中学三年の時に転校してきた。転校生なんてだいたい美少女と相場が決まっている(例外は認める)。


 北陸の地味で小さな海辺の町のありふれた市立中学校の三年五組。

 夏休み明けの騒がしい朝にその子が現われた。

 その日から、気の抜けた炭酸のようなぼやけた俺の毎日が輝き始めた。

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