グラドル天国を作るぞ! 〜俺の中から理想の彼女が消えてくれないので、自分で育てることにしました〜
瑞
プロローグ
第1話 十二億円の使い方
はっきり言って俺のことなどどうでもいい。その辺にいる特に特徴もない男だ。
しかし、29歳のある日、濡れ手に粟の大金を手にしてから人生が変わった。変わったと言うより、変えたと言うべきか。長年の妄想を実現するために。
俺のことなどどうでもいいと言いながら、これを言っておかないと話が進まない。
今、銀行口座には合計約十億円の残高がある。それとは別に50ビットコイン=約二億円。とあるオンラインブックメーカーで得た不労所得だ。
貯金がわりにビットコインを五万円分買って、そのサイトの中に海外ブックメーカーの利用方法が載っていたので遊び気分で登録してみた。いちばん手軽そうなギャンブルが、サッカーの勝敗予想だった。もちろんヨーロッパのサッカーチームなどほとんど知らない。適当にクリックしたら何百万分の一のまぐれ当たり。波乱の多いシーズンだったため当選率が跳ね上がっていたらしい。
ただそれだけのこと。
そんなことをすっかり忘れた頃に、ビットコイン入金のメールが届いた。サイトで確認してみると例のブックメーカーから当選金が支払われていた。金額は300ビットコイン=約十二億四千万円。
その額を見た時は、思わず笑ってしまった。笑いながら頬は引き攣り、手は震えていた。息が苦しくなった。
それから一週間は、何かの間違いかも知れないと毎日残高を確認しに行った。夜は眠れず、昼間も気はそぞろで、何をするにも手につかなかった。どうしよう、どうしよう、と気は焦るばかりで、世界に現実感がなかった。
ようやく夢じゃないことが分かって、すぐに250ビットコインを銀行に移して日本円にした。ああ、その前に急いで新しい銀行口座を五個ほど作り、そこに分散して入金した。一億円が三口座、二億円が一口座、五億円が一口座、そして端数の二千万ちょっとを普段使いの口座に入れた。
実際に日本円にしてみてやっと夢でないことが確信できた。それでもゼロが7つ並んだ預金通帳にはまだ実感がない。ずっと使ってる口座の21,314,608という数字の方がビビってしまう。
さて、落ち着け落ち着け。この大金をどう使うか、またはどう増やすか、それが問題だ。
ネットで高額宝くじに当たった人の逸話なんかを読むと、たいていしょうもないことに浪費して破産している。まあ、そんな大金を持ったことのない人にはザマァ展開だろう。だが俺にとってはまさにリアルな反面教師だ。
豪邸、クルマ、家族友人知人への大盤振る舞い、連日のどんちゃん騒ぎ、カジノで大負け。そんなとこが王道パターンか。まあ欲望にはキリがないという証明のようなもの。
あと慈善団体への寄付というのもあるそうだ。やはりどこかに罪悪感みたいのがあるからだろうな。
そして、金の切れ目が縁の切れ目というわけで、群がっていた有象無象は潮が引くように消えてしまう。一時の恩を感じているヤツがいれば上等なくらいだ。人は悲しいね、金をばらまくヤツもおこぼれに与るヤツも。
そうならないように、そうならないために、ここは一丁踏ん張って考えないと。
はたして俺は何をしたいんだ? 俺は何を得たいんだ? 俺は何のために生きてるんだ?
金の使い方を考えるということは、すなわち自分の人生を見つめ直すことにほかならない。はたとそんなことに気付いてしまう。
これが100万とか1000万とかなら、美味いものをたらふく食いたいとか、海外旅行に行きたいとか、あれが欲しいこれを買いたいで終わってしまう。半分は大事に貯金しとこうかと守りに入るのもごく当然。
しかし十二億円だ。桁が違えば使い方も違ってくる。家だ、食い物だ、旅行だなんだというレベルじゃない。それこそ宝くじ破産へまっしぐらの気がする。
つまり、目先の欲望ではなく、自分の生き方を賭けるべきなのだ。人生のビジョンに投資しなければならないのだ。その覚悟が必要なんだ。
で、俺の人生のビジョンって?
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