第262話 次元を超えた戦い

「貴様の下らない野望は必ず阻止してやる!」


「これは綿密に計画して進めてきた、エテルネルの遺伝子を授かった者たちを更なるステージへと引き上げる壮大な実験だ。折角の実験をあなた如きに妨害されてたまるかあ!」と浩紀が再度、ショックブラスターのように右腕を変質させてエネルギーを溜め込む。


 次こそ確実に決められるように、慎重にタイミングを見計らいながら近づいて行く。一方のキリスも、またしてもあの強力な衝撃波を撃ち込まれるのを警戒しつつ、どうやって浩紀を戦闘不能にするかを考えながら闘う。

 

 浩紀が右腕に、キュィイインと音を立てながらエネルギーを充填させている間は無闇に攻撃出来ないため、左腕でガードするか武器になりそうな物をひたすら投げて牽制するか。


 キリスは飛んできた木や石を瞬く間に目で捉えて、俊敏な動きで躱し続けて距離を詰めていく。あわや袋小路になると肝を冷やした浩紀が、地面を見て地中にあるものに気付いて不敵ににやける。


 手を伸ばして念力を打ち出し、覆い被さった土を突き抜けて出てきたのは先ほどよりも大きな巨大な岩だった。その巨岩をボウリングの球を投げるように彼を目がけて真っすぐ打つ。


 するとキリスは避けることも杖で粉砕しようもとせず、手を突き出して念力を発して飛んできた巨岩の動きを止めた。巨岩は念力のコントロール下に置かれ、空中で静止していた岩を、ビリヤードのように杖の柄の方を持って杖の先端で叩いて撃ち返す。


 彼の機転に驚いていると、先ほど武器として投げた岩が、自分に向かって勢いよく飛んで来たので念力制御が間に合わず、止む無くギリギリのところで左腕に力を込めてパンチして木っ端微塵に粉砕した。


 後ろに何かがいる気がしたのでパッと振り向いたところ、キリスが迫ってきているのが分かり、まるでテレポートでもしてきたかのように急に現れたので驚いていた。撃ち返された岩に気を取られ、その間に相手が真後ろまで回り込んでいたことに少しも察知できなかった。


 いよいよ杖で突かれると思われたその時、浩紀の表情が狂気に歪んだのを彼は見逃さなかった。もう既にエネルギーの充填が完了しており、後は撃つタイミングだけだった。


 ターゲットが目の前にいる今がその時。しまったと唇を噛んで防御姿勢を取っても時すでに遅く、直撃は免れない上にこの状態から射程外に移動するのは不可能に近い。


 いくら身体が頑丈でも、この近距離から受ければ相当なダメージを食らうのは必至だった。


「終わりだぁ!」と叫び、至近距離まで近づいて来たキリスの顔面に銃口を向けて衝撃波を撃ち込んだ。途轍もない質量の衝撃波が物凄い勢いで放出され、轟音とともに射程内にあるもの全てを薙ぎ払っていった。


 土煙が激しく舞い上がって視界が遮られる中、今度こそ仕留めたと思い込んだ浩紀は早速彼の死体を確認しようと、腕を振って土煙を払って視界が晴れて見えたのは、ボロボロになりながら強烈な衝撃波を耐え抜いて、二本足で直立しているキリスだった。浩紀は驚きのあまり、つい後ろへ跳んで距離を取ることにした。


「馬鹿な……今度こそ確実に手応えはあった筈。なのに何故だ。今の攻撃を間近で受けて、立っていられるわけが無い!」と分かり易く狼狽える。


 ひとまず体勢を整えてから次に繰り出す攻撃を考えようとした時、彼が浩紀のいる空中へ速やかに跳躍してそのまま浩紀の顎を杖で殴り、怯んでいる間に続けざまに腹部を勢いよく蹴り飛ばす。一気に劣勢に立たされた浩紀は一旦撤退しようとした瞬間、息もつかせぬ速さで距離を詰め、気付いた時には懐に潜り込んでいた。

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