第253話 急転直下
その瞬間、自分の中で何かがパンッと音を立てて破裂して発狂する城崎。その絶叫とともに念力が炸裂して凄まじい衝撃波が打ち放たれた。至近距離にいた茜は勢いよく押し出されて大きな瓦礫に全身を強打して意識を失い、一方の雅人は立っているだけで精一杯だった。
「こ、これは……くっ!」とあまりの強さに耐え切れず、後方へ飛ばされてしまう。
「うわあああああああああ!」
最愛の母親を失った悲しみ、雅人や茜そして何も出来なかった自分への無尽蔵の怒り。全ての負の感情を声に乗せて泣き叫ぶ。完全に我を失っており、四肢の骨及び背骨は雅人に折られていたので立っていられない筈だが、辛うじて筋肉で支えている状態とも言える。
自分の素行の悪さを知っても尚、「愛してる」と言ってくれたあの優しい表情が忘れられず、やりきれない思いを吐き出すように叫び続ける。
「くそ、屑のくせに……この程度で、俺と対等に立ったつもりか。上等だ。格の違いを見せてやるよぉ!」と言い放ち、浮遊していた無数の瓦礫を雨のように降らして城崎を集中的に攻撃した。
「うわああああああああああ!」
声帯が張り裂けんばかりの甲高い叫び声に呼応するように、周囲に落ちていた瓦礫が浮遊して、城崎の前に集まって盾を形成して降り注ぐ瓦礫をガードする。それらがぶつかってきた衝撃で盾は粉々に粉砕されるが、破壊される度にまた代わりとなる瓦礫を引き寄せて盾にして防御していく。その工程を圧巻の速度で繰り返し行った。
そうして互いに激しい攻防が暫く続いたが、ここにきて雅人が繰り出す瓦礫のシャワーの勢いを強める。
際限なく降って来る瓦礫の量とパワーが強すぎて、城崎の盾を作るスピードがいよいよ追い付かなくなり、それに加えて念力も弱まってきて、城崎は成す術もなく豪雨のように激しく降りかかる瓦礫を身体に受けることになってしまった。
雅人が降らせた巨礫が次々と城崎に容赦なく直撃し、ドドドドドドという轟音と共に粉塵が激しく舞い上がる。
「所詮力を開花させたばかり。制御すらままならない。まるで、上下左右どころか自分自身の事すら認識できていない赤子を同じだ」と吐き捨てて城崎の方へ近寄る。
気付けば周りに落ちていた瓦礫の殆どが、小石程度の大きさに粉砕されてしまっていた。覆い被さっていた瓦礫や小石といった残骸を念力で退かし、仰向けに倒れていた城崎の身体が露わになる。瓦礫の豪雨を受けすぎて気を失ってぐったりしていた。雅人はそんな城崎を見下ろして虫唾が走り舌打ちする。
「まさかお前も適合者だったとは。だが運の尽きだ。力を手にしてはいけない奴がいざそれを持ってしまったらどうなるのか。教えてやる!」と、どこかから引き寄せた先端が尖っていた細長い鉄パイプを手にし、伸びていた城崎に向かって言い放つ。
「こうなるんだよぉ!」と叫び、尖っていた先端を城崎の胸を刺して殺そうとしたその時、遥か後方で、自分と性質が似ている黒いオーラの爆発が発生したのを感知してふいに動きを止める。
炸裂した衝撃波とエネルギーが尋常じゃない勢いで押し寄せて来て、何事かと思った雅人が真後ろを振り向いた瞬間、すぐ隣に東がいることに気付く。何かしら攻撃してくると感づいて防御姿勢を取ろうとした時には既に遅く、東が強烈な回し蹴りを繰り出して雅人を彼方へ蹴り飛ばした。
轟音と粉塵を巻き上げながら雅人の身体が勢いよく地面を転がっていく。その間、東は城崎を抱えて出来るだけ遠くへ跳んで避難させる。
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