第117話 ありのままの自分で
城崎との面会後、洸太は地下二階まで階段で上って自室に戻ろうと歩いている時に、彼が言っていたことを頭の中で反復させてもう一度情報を整理してみる。
橋の上で城崎それから雅人と対面した際、洸太は正体を隠すためにヘルメットを被っていたのにも関わらず、流れている「オーラ」を読み取って瞬時に洸太だと分かった。城崎の場合は、「直感」で何となくそう感じ取って半信半疑だったのに対して、雅人は確信していたような言い方だった。
城崎も自分と同じように能力者だとしたら、雅人と同じように、他人の雰囲気またはオーラが可視化されて、それを捉えることが出来ていた筈だ。そう仮定していざ城崎に聞いてみたが、何も見えずただ単純にそう感じ取っただけという、なんとも予想外な答えが返ってきたのでどうもスッキリせず、解を探し出そうと考えれば考えるほど益々謎が深まるばかりだった。
「光山!」自分の名前を呼ばれて我に返って声がした方を向く。通路の反対方向から陽助が歩いてくるのが見えた。
片手で額と首回りの汗をタオルで拭いている。心なしか顔が溌溂としている。そういえば、陽助が頭を冷やすと言っていたので、先ほどまでどこかのトレーニングルームで身体を動かして存分に汗を流し、ストレスを解消していたのだろうなと推察する。
「さっき社長に呼ばれた。今から六階の会議室に行くぞ」
「えっ、ああ、分かった」そういえば、傷の手当てをしてからまだ倉本社長に報告していなかったことを想起する。二人は速やかにエレベーターに乗り、六階にある会議室へ向かう。
「で、あいつに何を聞いたんだ?」エレベーターに乗りながら陽助が尋ねた。
「ちょっとね。でも、僕が求める回答が得られそうになかったから、何も聞かなかった代わりに苦言を呈しておいた」
「あいつみたいな、性格が最初から捻じ曲がってる奴は何を言っても無駄でしかない。一回死ぬような目に遭わない限り変わらないさ。とはいえ、これで城崎の保護に成功した。あとは日向と岡部の潜んでるアジトを見つけて二人を下せば、全て片付く。あと少しだ。あと少しで全部終わる。そうしたら俺はお父さんに……」
「なんか根詰めてるみたいだけど、大丈夫?」と心配そうに訊くも、陽助はだんまりを決め込んでいる。
「別に。普通だ」と素っ気なく言う。
「陽助……この際だから言っておく。東は東。陽助は陽助だ。そうやって周りに流されないで、ありのままの自分で良いと思うよ。自分らしくいる方が、どんな絶望的な状況に陥ったとしても、絶対に乗り越えられると思うから」
「フッ、余計なお世話だ」と冷淡な口調で言う。
そうしているうちにエレベーターが六階に到着した。
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