第106話 オーラ
雅人との接触を阻止するべく、洸太は城崎より先回りして高く跳躍した。雅人は自分の方へ一直線に向かって来る人物を、途端に洸太だと視認して念力で弾き飛ばす。
遠くへ飛んでいった洸太は、すぐさまトレーニングで向上させた身体能力と運動神経を活かして、器用に体勢を立て直して猪のように猛進するが、雅人は車を浮かして洸太へ向けて投げ飛ばす。
それを見た洸太も、乗り捨てられた車を数台浮かして一斉に投擲して応戦する。雅人は放物線を描いて飛んできた車をいなしたり、押し戻したり、念力で進行方向にある全ての障害物を弾き飛ばしながら反撃して進んでいく。
「クソ、スーツが無かったら背骨が折れてたぜ」陽助も再び起き上がり即座に駆けつけて接近戦を挑むも、雅人が得意とする念力を使った攻撃を食らって押し倒されてしまう。
その間城崎は割って入ろうとしたが、常識を超える壮絶な攻防をただただ傍観することしかできなかった。自分も被害を受けまいと、ボロボロになって倒れていた車の影に身を潜めて、三人が繰り広げる異次元の闘いの行く末を見守ることにした。
「うっ、強い……」本音を漏らす陽助。これまでは東と組んで臨むことを想定したトレーニングしかやって来なかったため、ぶっつけ本番で組まされた洸太とどうしても息が合わずペースが狂ってしまう。
それでも何とか足止めを図ろうとする二人だった。洸太が無人の車を雅人目がけて投げたが、いとも容易く撥ね返されてしまい、その車を洸太はギリギリのところで回避したので車はそのまま下の海へおちていった。
投擲するための車の殆どが海へ落下したことで、使える武器が無くなって闘いの衝撃で残骸が散乱しており、周りを見回せば、存分に動き回れるだけの広いスペースが出来ていた。橋を支える太いケーブルが何本か戦いの衝撃で切れて道路に横たわっている。
空いたスペースの真ん中あたりに三人は向かい合った。洸太と陽助は、かなりの体力を消耗して息切れしているのに対して、雅人は全く息が上がっていない。
「これだけ派手にやっといて……何であいつは何ともないんだよ」
「分からない……でも、前より強くなっているのは確かだ」
「それにこいつ、そこら辺にある車を全部ダーツみたいにバンバン投げ飛ばしやがって。相当イカれてるぜ。他の市民が巻き添えでも食らったらどうするつもりだ」
「俺たちも人のこと言えないけどね。でもこれで投げられる車も失った。あとはうまく接近戦に持ち込めば」
「まさかお前まで来ていたとはな、光山」
「えっ、どうして分かったんだ」雅人に正体を見破られた洸太は、一瞬戸惑って身が硬直した。
「防護服を着てカモフラージュしたつもりだろうが、オーラでバレバレなんだよ」
「オーラって……」雅人が唐突にスピリチュアルなことを言い出したことに困惑する。
オーラとは、赤外線や紫外線といった人間の目では捉えられない不可視光線のような、その人間一人ひとりが持つ霊的なエネルギーのことであり、雰囲気とも呼ばれている。その時の感情の変化に大きく影響されやすく、今その人がどんな感情を抱いているのかを感じ取ることが出来るが、陽の光のように目には見えない。そして今の雅人にはどういうわけかそれが見えるようだった。
「その様子だと自覚は無いようだな。そんな状態でこんなところまで来るなんて愚かにも程があるぜ。オーラとスキルを使いこなせないお前らの動きなんぞ、全部手に取るように分かるのさ」
「何だと」
「何をボソボソ話してたのか知らないが、どんな策を立てようがお前らの攻撃が俺に届きはしない」
「策なんて必要無いさ。倒すまでやる。それだけだ」
「やれるもんならな」
「正々堂々とやってやるぜ。だがその前に一つ聞かせろ。どうして東を襲ったんだ」
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