第85話 破片<シャード>
「解析班に依頼して分析してもらったら、岡部浩紀の一部のもので間違いないと断定した」
「あの岬で消息を絶ち、灰だけが残った……これらの事実から考えられるのは、岡部はそこで焼身自殺を図ったものの、何らかの方法で生き延びたといったところか」と腕組みをしながら考えをまとめた。
「だとしたら、彼は何でそんな矛盾するような行動を取ったんだ?」
「飽くまでも可能性の話だ。現時点で俺の憶測の域を出ないし、本当に自殺だったのか、はたまた自殺と思わせて俺たちを撹乱させるために、敢えて自分の肉体の一部を切り落として燃やしたのかも知れないし、実際のところ不明だ。まあ、本人に聞いた方が手っ取り早いけど」
「光山……もとい永守君の話だと、あいつはとんでもなく強いんだろ。しかも見たこと無い銃まで持ってるんだとか」
「ああ。倉庫の時は油断したが、二度は無い。次は万全な状態で臨むさ。いざとなったらシャードの力を借りて戦うよ」
「実はそのシャードの解析ももう済ませてある」と言って、上着のポケットから透明なポリ袋に入ったシャードを東に返す。
「どうだった。何か分かったか?」シャードを受け取って期待するような口調で尋ねる。
「結論から言わせてもらうと、解析不能だ。元素記号を調べてみたけどそのどれに該当しなかったし」
「そうか。そういえば、石の表面に小さな罅が入っているみたいだけど、心当たりはない?」
「罅? ちょっと見せてくれ」と袋からシャードを取り出して綾川に渡し、東が指示した部分に目を近づけて観察した。
「いや、この罅は知らないな。強度や耐久度を確認するためにダイアモンドでコーティングされたドリルで削ってみたり、錘で思い切り叩きつけてみたりしたが、そのどのテストでも石に傷一つ付けられなかった。それぐらい頑丈な筈なのにどうしてこんな傷が出来たのか見当も付かないよ」と言って、石を再び東に返却する。
「じゃあ経年劣化とか?」
「その可能性も考えられる。しかし全く未知の物質だ。なあ、その石は本当にお守りなのか? お守りなら解析してくれと俺にわざわざ頼みに来ない筈だよな。その石は何のために使われるものなんだよ」
「この石はシャードと呼んで、首に装着するチョーカーに嵌めこむと、一時的に身体能力と念力を飛躍的に伸ばしてくれるアイテムで、俺の切り札でもあるんだ。まあ、使用後の反動は想像以上に大きいけどね」
「その石はどこでどうやって手に入れたんだ?」
「信用できる方から『戦闘時に使え』と言われた。その方が一体どうやって手に入れたのかまでは知らないし、どういう物で出来ているのかも正直興味なかった。でもまさか地球上に存在しない物質だったなんて」
「じゃあ傷が付いた状態だともう不良品ってことか?」
「どうだろう。もう駄目かも知れないし、たとえ使えるとしても効果は半減すると思うけど」
「何の物質で構成されているのか分からない以上、頻繁に使うのは危険だ」
「心配するなって。さっきも言ったけど、本当にヤバいと思ったときにしか使わないからさ。この前言ってた、ブラックボックスの開封作業で忙しいのにすまなかった」
「僕もそのシャードがどんな成分で構成されているのか興味あったし、作業には全然支障はなかったから平気だ」
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