第62話 乱入①
その刹那、倉庫の壁が轟音を立てて破られたかと思うと、衝撃波が恐るべき速度で押し寄せてきた。進行方向にあるもの全てを薙ぎ払い、勢いを保ったまま広範囲に広がっていく。まるで透明な爆風のような衝撃波は、今の東や陽助では発することが難しいほどの尋常じゃないエネルギー量を持っていた。
とても人間離れしている上にどのように発せられたものなのか分からなかったが、当たればひとたまりも無いことは間違いないと思った。念力を使って防御出来るかどうかも分からない。雅人を担いで直ちに離れようとするが、思いの外迫り来るスピードが速く、東と陽助は案の定追い付かれて衝撃波に呑み込まれてしまった。
あまりの衝撃で二人はそのまま倉庫の外壁を突き破って外へ放り出され、その後弧を描いて飛んで地面に落下して気を失う。先ほどの衝撃波で木っ端微塵となった倉庫から颯爽と現れたのは浩紀だった。白いタートルネックに黒のズボンにブーツという爽やかな着こなしをしていて、吹き付ける風や雨などものともしていない。
「ギリギリ間に合ったか。間一髪だったな。それにしてもこの銃、想像以上の威力だ」と手にしている銃を見ながらその恐るべき威力に感心して言う。
浩紀は、十メートル離れたところで風雨に晒されながらぐったり伸びている雅人を念力で浮かして引き寄せて肩に担いだ。左手には近未来的な形状をしていたショックブラスターを持っている。
再び目を覚ました洸太が顔を上げると、偶然にもその場面を目撃してしまう。
「久しぶりだな、光山」と意識を取り戻した洸太に向かって言った。
「岡部……どうしてここに?」
「こいつを迎えに来たのさ」と担いでいた日向のことを顎で指した。浩紀がここへ来たのは、東と陽助に打ちのめされて連行されそうになった雅人を連れ戻すためだった。
「あの二人、まさかお前が?」
「そうだよ。一人たりとも目撃者がいてはならないからな。そういうお前こそ、どうしてここにいるのさ」
「僕は、日向を止めるために……」と恐る恐る言い、その自信無さげな様子は浩紀に瞬時に伝わった。
「そうか。じゃあお互い敵同士ってわけだな」
「岡部、お前に一体何があったんだ? どうして日向を」
「敵であるお前に話すことなんか何も無いさ。ここで死ね!」と、持っていたショックブラスターを構える。引き金のすぐ上にあった出力ダイアルを右に目一杯回して、放射する衝撃波の出力を最大限になるように調節して「ブウゥン」という先進的な機械音を発して起動して銃口を洸太に向けた。
その流線形でインパクトのある未来的なデザインの銃につい見入っていたその時、浩紀は引き金を引いて撃った。
キュィイインという音を立てて、銃口から高密度に圧縮された衝撃波が透明のビームのように勢いよく放射された。もしあんなものに当たってしまえば、東や陽助が受けた以上のダメージを負うことになるだろう。
しかし、あまりの迫力に洸太は足が竦んでその場で動けなくなってしまう。そうしているうちに気付けば衝撃波があっという間に目前まで迫ってきた。
あわや直撃は免れないと目を瞑ったその時、身体が真横に引っ張られて間一髪のところで射程外へ脱出して躱すことが出来た。まるで強力な磁石に引き寄せられていくような感覚だった。衝撃波が洸太の横を通り過ぎて遥か彼方へ消えていった。
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