第5話 初デート。①

『裕也、デート行こうよ』


 朝起きて早々そんなメールが来たので驚く。


『学校のクラスメイトとかに見つかったらやばくないか?』

『大丈夫。駅前に集合で!!』


 こんなメールが来ると本当に俺は黒瀬悠の彼氏なんだと実感するな。しっかりしなくては。


 俺にしては珍しく服装や髪型に気を遣いまくって家を出た。


===


 焼けるような快晴の中、元々女友達で俺の彼女となった美少女、黒瀬悠がやってくる。


「おまたせ!」


 悠は裾が短めのワンピースにジャージを羽織ったラフな印象の格好だった。


「にあ、うと思う」

「ありがと。自然体でやろうと思ってね」


 自然体でこれですか? 可愛すぎませんか? 絶妙なスタイルの良さも相まって漏れなくLUKが上がりまくる。


 つまりは幸福が過ぎる。余りの多幸感に死ぬんじゃないかってレベル。


「えっと......大丈夫?」


 大丈夫じゃない。けど格好くらいたまにはつけさせてくれ。


「あぁ。行こう」


 人混みの中で固まってるのもアレだし。


===


 最初に訪れたのは何だか洒落た雰囲気のカフェ。明らかに女性やカップルが多く、普段なら全く縁がないであろう場所だが、今は胸を張れる。


――いや、やっぱダメかも。溢れ出る陽のオーラがまず怖い。


 こんなシャレオツ空間でも悠は周囲に視線を向けられるので、劣等感も余計に加速する。やはりこういうのは簡単に治るものじゃないな。


 かなり混んでいるけど何とか空いている2人用のテーブル席に腰掛ける。


「ご注文はお決まりですか?」

「カップル限定のらぶりぃ♡イチゴパフェで」

「かしこまりましたー 」


 え、何怖い。何だよ、らぶりぃ♡(はぁと)って。


 不服で悠に目線を向けると向こうはニヤニヤ笑っている。うん、可愛いから許す。というか、そんなに満面の笑みを向けられたらこっちも許すしかない。



 そこまで待たずに届いたパフェだが、まぁ凄い見た目をしている。


 ハート型のチョコとイチゴがこれでもかと乗っていて面食らってしまう。


 普通のパフェの二倍くらいの大きさがあり、ひとつしか届いていない。皿にはスプーンが二つ。


 要は『二人で食べろ』ってことだ。


「さてと、一口目は一緒に食べない?」

「......」

「いいからいいから」


 そう言って悠はこちらにスプーンを雑に持たせてくる。羞恥心を全力で抑えるしかない。


 「「いっせーので」」


 恥ずかしい掛け声と共にパフェに口をつけた。


 美味い。俺はスイーツ(笑)とか言ってた人間だけど何だかんだで糖分は正義だと思った。もうすぐ夏ということもあり、余計に冷たいものは効く。イイネ。


「何だか二人だけみたいだね」


 そう、二人で同じものを食べるなんて滅多にない事だろ。何より、悠が楽しそうなので良しとしよう。俺も楽しいし。


 けど、どちらかと言えば満たされている感覚の方が勝っている。


 この独特の感覚にドキドキしつつ、結構早くに完食した。


「はぁ......ずっとこういうとこカップルで来たかったんだよね」

「え? 元カレとか居なかったのか」

「いたけど......合わなかったしすぐ別れたかな」

「......」

「大丈夫。離さないから」


 強い語気でそう言われる。全く何で俺を選んだのかは分からないが、大切にしようと思った。彼女も、今の幸福も。


「次はどこ行く?」

「決めてなかったのかよ」

「じゃあふたりで決めよ」

「映画、とか?」


 恋愛映画デビュー、しとくか......するのか......?

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