間章 黒瀬悠side

 私が裕也の関係をずっと隠してきたせいで裕也は白い目で見られている。


 私からグイグイ行ったそばからこれだ。


 ひたすらに隠し通して、ろくに向き合いもせず。最低だ、私は。


「悠、やっと見つけた」

 

 そこにいたのは、裕也に告白した、私の友達でもある山井明那だった。


「明那? 何で」

「普通に体育館裏にでもいるのかなって。そういう所好きなんでしょ?」

「まぁ、そうだけど」

「坂くんと多分今すごくいい感じだよね」

「うん......いいの? 恋敵になると思うんだけど」

「諦めてないよ。でも奪うのは違うし幸せになってくれって応援することしか出来ないよ」

「そっか......」

「だから、坂くんと向き合って、支えてあげて欲しい。ただ片思いしてただけの奴が何言ってんのって感じだけどさ」


 向き合う、か。


「分かった。ちゃんと向き合う」


 そしてどうすべきか、決める。


===


 裕也と向き合う......どうすればいいのだろう?


 まず私が悪かったのは隠したこと、嘘をついたことがまず第一だ。


 そして思えば裕也はいつも何かと闘っていたように思える。目に見えない、そんな何かと。


 私に出来るのはそれを受け止めてあげること。それだけだと思った。


 悩みは人に話せば楽になるのだろうか? 私はなると思う。一人で抱える事が悪いとは思わないけどそれで爆発しそうになる思いは分かる。


 だから信頼出来る誰かに話すことには意味があると思う。


 裕也がどれくらい私のことを好きなのかはまだ分からないけど好いてくれているはずだ。そうと信じたい。


 ならその受け皿を用意するだけだ。大丈夫。きっと。


 あの人は人の尊厳を無闇に傷つけるようなことはしない。というか出来ないと思う。だから大丈夫。


 誰だって多かれ少なかれ悩みはある。


 沢山の友達やクラスメイトの相談相手になってきたからこそ分かる。


 その中で馬鹿みたいな内容でもそのどれもが同じ切実な悩みで、大小の話では無いのだと思うようになった。


 私はスマホを立ち上げ、裕也に逃げ腰のメールを送った。受け入れてくれるだろうか? 言ってくれるだろうか?


 考えても仕方ないので今日は眠ることにした。明日、決まる。

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