第2話

 キンコンカンコーン


 授業の開始のチャイムが鳴り、急いで保健室から出ようとするが扉の前には零さんが立ち塞がった。


「あの、急いで居るのですが……」


 眉を下げ困った表情を作るが、零さんは無言を貫き一向に退いてくれる気配は無い。今まで遅刻など一切したことの無い僕はこの状況にもの凄く焦っている。どうしようと悩んでいると、零さんが口元を手で覆っているのが見えた。


「大丈夫ですか?」


 もしかして、気持ち悪いとか調子が悪いのかな?不安になり質問すると「くくっ」という声が小さく聞こえ、口角が少し上がっているのが見えた。もしかして……


「あの、笑っているんですか?」


「バレたか〜」


 呑気そうに笑う零さんを見た瞬間、疲れがどっと押し寄せ、そして本気で心配する必要が無かったじゃないかと後悔などの感情が心の中で渦巻いた。


「はぁ…… あの、もう退いてもらっていいですか?」


 僕の事を揶揄い終わったのなら、とっとと退いてほしい。


「まぁしょうがねぇな。ただし、明日も来いよ。」


「はぁ、なんで?」


「理由はどうでもいいだろ。来なければお前がロボットなの言うからな。」


「うっ…… わ、かった。明日のいつ来ればいい?」


「また、この時間とかは?」


「また授業に間に合わないと困るので、昼休みか放課後がいいです。」


「じゃあ昼休み来いよ。」


「分かりました。」


 僕はそう言うと急いで教室に戻り、すみませんと言って授業を途中から受け始めた。

 全てが初めての体験だった。授業に遅刻することも、珍しいなと言われるのも、授業中に集中しなかったのも。全て今日会った零さんが原因なんだろう。僕は少し明日会うのが楽しみだと思った。






 あれ?僕に感情なんて無いはずなのに…… なんで…?

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機械仕掛けの恋 @Aonosekai_

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