15話目
「全員を集めろ。方針を話す」
薄暗い部屋に、高身長の男が手を組んでイスに貫禄たっぷりで座っている。勿論、我らが隊長の小鳥遊義一である。
義一の発言に真っ先に反応し、他の天使を呼びに行くのはファーシスである。
そして、そのファーシスに事情を聞き、医務室にいるリヴァにも伝えようとアバンが奔走したのが――冒頭の場面である。
1
「全員集まったな。手短に説明する。――サタが攫われた。だから取り返す、以上だ」
端的に、はっきりと喋る義一の姿は、サタが攫われたことを夢で終わらせられない雰囲気を纏っていた。
そして、サタが攫われたと聞かされ、多かれ少なかれ天使達の間に動揺が走る。――特にひどく動揺していたのは、
「……は? そんなわけ、ないだろ」
感情を必死に抑えようと、小さい声で発言するミカレだった。
こめかみにはうっすらと血管すら浮かぶほど。握っている拳は爪が食い込んで血が垂れるほど。
それほど攫った相手に怒っていた。――それほど、ミカレはサタが好きなのだ。
「隊長。奪還には俺がいく。――絶対に」
「……ふむ」
断固たる目をしていた。たとえ尊敬する隊長と決別してでも、必ず助けるという決意が溢れ出ていた。
義一はミカレの両目を見据え、そして
「……元々行ってもらうつもりだった」
少し微笑み、そう言ったのだった。
「さて、奪還だが、全員を向かわせるわけではない」
改めて義一は天使達全員に向き合い、話を再開する。
「ファーシスとリヴァは、奪還で天使たちがいなくなるこの探索船を守ってくれ」
義一はそれぞれの目をしっかりと見て言う。
そういうところが、尊敬される要因なのだろう。
「天使たちが全員行ってしまえば、ここががら空きになってしまう。相手のケガレが知能を持っているなら、そこも警戒しなければならない」
リヴァとファーシスは無言で頷く。
そして、それ以外の天使たちはサタ奪還の役を担うことになった。
普段は周りに気をかけるミカレが、今は只静かに怒りを燃やしている。――そこが、アバンには少し懸念点だった。
「……いくぞ」
ミカレが小さく呟く。サタを取り返す。それは、全員が一致している願いだ。だから、ミカレの呟きに全員が賛同した。
そうして、天使達は船を出て歩みを進めていく。
サタが攫われてから30分程度の、素早い行動であった。
2
――1番最初に見えたのは、黒い世界だった。
真っ暗で、何も見えない。そして、次第にそれは瞼を閉じているからだと気づく。瞼を開き、目に飛び込んでくる光に目を何度も瞬かせながらも本当の世界を、視界を通して脳が理解してゆく。
理解したのは、今自分は木で作られた固いベットで寝かされていること。そしてこの家自体も木製でできていて、大きさは3畳間程であること。
完全に脳が覚醒してもわからないこととしては――、
「……わたし、誰……?」
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