14話目

「「中々良い一撃であったぞ」」


重なったような声だが、それを発しているのは1つの生物だ。 ――だが、あり得ないことである。あり得てはいけないことなのだ。


「……なんで、ケガレが話せるんだよ……!」


憎悪と嫌悪を混ぜ合わせた声でスティーグスが隠そうともせず言葉と感情をぶつける。

その時点で既にナイフを両手に持って戦闘態勢は万全だ。

――いつでも戦える。


「「まあ、そうかっかするでないぞ小僧」」


ケガレが首をもたげる姿は、5mという巨体も相まって不気味だ。そしてケガレはもたげた首を更に動かし、喉らしきところをスティーグスに見せてきた。つい先程掻き切った筈の、黒い首を。


「「手加減していたとはいえ、吾輩に一撃入れられるなど容易ではない」」

「……手加減?」


構えも、警戒も解かず、スティーグスはケガレと対話をし始める。


「「あぁ。吾輩は殺す気はなかったならな」」

「なんだと……?」


――じゃあ今から殺す気でやってみろよ、と勢いのまま言い放とうとしたが、スティーグスより早く、ケガレはもう一度口を開いてしまった。


「「――終わったな。……では、さらばだぞ、豪胆な少年少女よ。……追ってきたら、次は容赦はせぬぞ」」


唐突に会話を打ち切り、自身の所持する翼で空に飛び立つケガレを、2人は追うことができなかった。

ケガレが飛び立ち、向かう先は豆粒程の少女の先だ。

それを何もすることが出来ずに目で追っていた2人は、衝撃の事実を目の当たりにしてしまう。


――少女が、サタを組み伏せていたのである。


「サタ!?」

「……あ、さっきの2人」


遠く、それこそ張り上げた声でも届くかわからない程の距離なのに、スティーグス達はサタを組み伏せた少女がなんと言ったのか、理解できてしまった。

その口は、確かに「追ったらこの子を殺す」と、そう言っていたのである。


          1


「……だから、魔法を使って最高速で報告にきたのか」

「うん……」


時は進み、探索船での1幕となる。レジィを連れ、急ぎで探索船に戻ったスティーグスは、義一に包み隠さずに正直に事実を報告したのである。


「……よく、話してくれた。サタを助けるぞ」


義一の、信念の籠もった一言が漏れる。

そして、始まる。――地球にきてから、1番最初の『大一番』が。

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