13話目

サタと少女が戦闘を繰り広げていたと同時、スティーグスとレジィもまた、異形のケガレを2人で相手取っていた。


「――ッッ!!」


耳障りな獣の声をケガレが発する。

空を飛ぶケガレに対する決定打を、今だスティーグス達は与えることが出来ていない。


「……そもそも僕たちの魔法って戦闘向きじゃないよね……ッ!」


空から降り注ぐ瘴気に包まれた鞭を避け、スティーグスは愚痴を漏らした。

隣では鞭を避けながら拳銃をケガレに打ち込むレジィがいる。

レジィは飛び道具があるだけまだマシだが、スティーグスに支給されている武器はシースナイフ2本である。

『ファスト』を使って加速すれば空に佇むケガレに届かないことはないと思うが、そんな無防備を晒せば飛んでいる最中に鞭に落とされることはわかりきっている。

――先刻から、サタの雷の音が聞こえてくる。

サタが負けるとは思えないが、だが、スティーグスは懸念しているのだ。


「……優しすぎるんだよ」


レジィにも聞こえない音量で、口の中で小さく呟く。聞かれたらレジィにからかわれるに決まっているからである。


「レジィ、協力して」


そう言ったときの、レジィの少し驚いた顔が印象的だった。


           1


――ケガレは理解していた。

今までの経験、そして生き残っていた中で育まれた本能から、察していた。

――この2人は自分を害する程の力を持っていない。

上空から鞭を放ち、必死に避ける天使達を時間の問題だと嘲る。

天使が持つことによってケガレにダメージを与えられる存在となった銃火器でも、特段自分への決定打にはならない。あとは、時間の問題である。


「――ッッッ!!」


今一度雄叫びを上げ、絶望感を――、


そこで、ケガレは違和感を抱いた。

『居ない』のだ、天使が。今や建物など崩壊し、あたりに隠れられる場所など存在しない。

なのに、見当たらない。――逃げたのか。

居なくなったのであれば、その時点で目的達成である。嬲りすぎるなと命令も受けている。

戻ろうと、そう体を翻した――瞬間、


「逃げるわけないだろ……ッ!」


虚空から声が聞こえたと理解すると同時に、ケガレの喉が掻っ切られた。


          2


「レジィの魔法で透明になって、アイツが興味を失った瞬間に魔法で突っ込む」

「突っ込むとき、透明化解けちゃうよ?」

「僕が背負うから解けないよ。――離さないでね」


そう言ったスティーグスに押し切られ、体験したことのない速度でケガレに迫るレジィの心情や如何ほどだったことか。


「超怖かったんだけど!?」

「あの程度で怖いとか……」


嘲笑ってくるスティーグスは、先刻の真面目な雰囲気など少しもなかったかのように普段の通りレジィをからかってくる。

だが、悠長にしている暇は無い。早くサタの元へ――、


「「……見事であった。中々、見どころのあるいい一撃だ。」」

「ッ!?」


落ちたケガレを放り、サタの元に向かおうと走り出した2人の背後で――ケガレが声を発して立ち上がった。

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