12話目

「――あなた、何者?」

「教えない」


金色の髪にイエローダイヤモンドのような双眸を煌めかせ、だが対話の意志は少しも見せない少女と相対しているサタは脳内で思考を巡らせていた。

――既に天使の輪っかと羽が生えているということは既に魔法を発動しているということだ。


「じゃあ、なんで私を狙うの?」

「……あの中で1番強いから」


少女は少し考えて発言する。何かを隠したというより、この情報なら明かしても良いということを考えていた間だった。

あまり同じ天使の姿の敵とは本気でやりたくない、というのが本音である。しかし、それでレジィ達に危険が及ぶなら――、


「容赦しないよ」


返事は求めていない。

サタは少女を越して向こうに見える豆粒程の大きさの2人の天使達を見据える。


「『サンダー』」


――そして、サタの頭上に輪が顕現。紡がれる言葉が引き連れる現象は、その言葉の大きさとは比較にならないほど早く大きい雷だった。

稲妻というより、最早ビームと呼ぶべきそれは地面を抉りながら少女に迫る。

――迫り、迫り、迫り、しかし少女は動く素振りすら見せない。

もう、当たってしまう。――刹那、少女の姿がぼやける。


「……え?」


――サタは腹部に何かを当てられた感覚がした。

それが少女の手なのか、何かの武器なのかは確かめられなかった。

何故なら――刹那の間もなくサタが更に後方に衝撃で吹き飛んだからである。

――痛い。腹部から広がる痛みが脳を駆け巡る。

激痛が、鈍痛が、苦痛が、疼痛が。

おおよそ痛みという痛みが全て同時に体を駆け巡るような感覚を、サタは味わった。

――サタは地面を転がりながら吹き飛び続ける。

恐らく1秒程しか経っていないが、サタには何十分にも感じられた。


「ッ……!」


吹き飛ぶ方向に雷を出し、サタは衝撃を相殺する。

なんとか勢いが死に、サタはもう一度立ち上がる。


「……これで終わりじゃない、よ?」


宝石のような目と目が合った。だが、それを理解する前にサタの目に少女の白い手が、握られた拳がサタの顔面に迫る。

目で追えないその拳は、サタの可愛らしい顔に迫り、衝撃と共にそれをぶちぬく――筈だった。


「……!」


始めて、少女が表情らしい表情を見せる。

驚愕の、先刻と比べれば少し目が見開かれた表情。

――だって、当然だろう。少女の拳はサタの顔すれすれで止まっているのだから。


「これも魔法だよ」


体中から電力を放出し、サタの体に触れる前に電力に触れる状態を作り出す。

その電力に触れれば、その相手が電気の通う体を持っていればスタン状態にすることができる。

サタは全身が電気によって小刻みに震える少女の腹部に触れて――高電圧を、少女の全身に流して無力化させた。

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