番外編3

「……天使達……大丈夫かなぁ……」

「まぁだ心配してんスか……」


探索船の会議室で、2人の男が話している。

片方はネガティブな雰囲気で、もう片方はノリの軽いポジティブな雰囲気の男である。


「だって……ここケガレだらけだし……」

「この前の異形のケガレも倒せたし、どこが心配なのか俺にはわかんねッス」


――カツキは、その瞬間に少し気になったことを、ユウキにきいた。


「普段、どんなことが心配になるんスか?」

「ふ、普段……?」

「そう、普段」


最早顔が少し青白くなっているのがデフォルトのようなユウキは、その顔でしばし考え込んだと思えば――、


「天使達が怪我したりしないかなとか、ぼろぼろで入ってきたらどうしようとか」


――案外天使のことを心配する故のあのビビリなのだろうかと、カツキは一瞬その考えが脳裏をよぎったが、次の瞬間には霧散した。


「ケガレがこの探索船にこないかなとか、隊長にいきなり怒られないかなとか、天使と庵野さんの組合で傷がついたらどうしようとか……」

「ちょ、ス、ストッ……」

「ご飯食べてる時に何か粗相で注意されると嫌だなとか、変なタイミングで火傷とかしたらどうしようとか、操縦ミスったらどうしようとか……あぁあ考えただけでも不安に……」


そろそろカツキでも中和しきれないことを、カツキ自身本能で理解した。

一体、何があったら人はここまでビビリ――ネガティブになることができるのだろうか。

逆に教えてほしいくらいである。


「何をしている、2人共。天使達が持ち寄ってくれた情報で今後の方針を決めるぞ」


――義一の凛とした声である。カツキは思わず助かったと思ってしまった。


今日学んだことは、『ユウキにはなににビビるか聞いてはいけない』ことである。

その日、カツキはそれをしかと胸に刻み込んだ。

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