番外編

「ファーシス、お前隊長のことちょー好きだよな」

「……まあ、好きというか尊敬してるって感じだけどね」

「あー……なるほど」


カイザンはファーシスに、唐突に思ったことを質問する。


「――じゃあ、他にも隊長を尊敬するやつが出てきたらどうすんの?」

「――」


すると、ファーシスはしばし顎に手を当てて思案し始めた。

小難しい表情を繰り返し、ファーシスの脳内で色々な思考がなされる。


「……俺と戦ってもらうかな。――本気で俺はやるけど」


――その時の笑顔と、それに反して、冷水をまるごと投げつけたような冷たい空気感を、カイザンは忘れることはないだろう。


「え、じゃあさ」


すると、その空気を感知せずにユミリィが質問を引き継ごうする。

――嫌な予感しかしない。


「隊長にかのじ――」


ユミリィの耳のほんの数ミリズレたところに、本気の速度で光のナイフが刺さっていた。


「ごめんごめんごめん!! 許して隊長に彼女はいないから!!」

「は? 隊長に彼女ごとき作れないはずないだろ。お前バカにしてるのか?」


――じゃあどう言えばいいんだ!!


カイザンとユミリィは同時に心のなかでツッコむが、最早それを声に出せば悲惨な目に遭うことは確定している。故に選んだ選択肢は『無言で謝る』だった。



後日、船内を魔法で破損させた罪で暫く探索船の掃除を1班だけやらされたのは、別の話である。

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