第9話

「――と、いうことで、7班のリヴァ兄が回復するまで、代わりの探索を引き受けることになった」

「「はい?」」


ファーシスが腕を組みながら満面の笑顔で伝えた内容に、残りの2人は共に声を揃えて頭に疑問符を浮かべた。


「ファーシス? 俺ら戦闘班は最前線でケガレを祓うんだぞ?」

「そうだよ? なんで引き受けちゃったの?」


交互にファーシスを質問攻めにするのは、同じく1班のカイザンとユミリィである。


「今更遅いぞ。……しかし、何故君らはそれぞれ右目と左目を隠しているんだ? 兄妹か?」

「「兄妹じゃない!!」」


声を揃えて講義するが、それすらも兄妹らしく見られるとカイザンは思ってしまった。

だが、兄妹と疑われるのも仕方がないと言える。

カイザンは目まで伸びる髪を左でまとめた結果左目が隠れた髪型。

ユミリィはカイザンと同じレモンイエローの髪で、カールのツインテールである。

そしてこっちは右目を隠しているのだ。


「まあ、取り敢えず行こう。――殲滅と、探索だ」


3人はそれぞれの武器を取り、探索船から出発した。 


           1


天使達は各々武器を持っている。

だが、武器を使うのは能力でケガレを殺せない天使達が多い。

ファーシスはほぼ武器を使わないが、カイザンは片手剣。ユミリィはガトリングガンを使う。

何故天使全員に重火器を持たせないのかと1度カイザンは庵野さんに問うたことがあるが、返ってきた返答は「1度弾が切れると補充できない」だからだそうだ。


「――探索ったって、何やればいいんだよ」


足元の瓦礫を蹴りながら、カイザンはファーシスに聞いた。


「基本、倒したケガレの記録だ。あとは、人間の住めそうなところを見つけるとかだろう」

「あぁ、なるほど」


納得はしたが、内心住むところなど見つからないとカイザンは考えていた。

――すると、


「……ッッ!」


いつもどおりのケガレの唸り声。

獣のような声にエコーがかかり、あからさまにこの世の理に反していると世界に知らしめる存在。

物陰から現れたそのケガレは――、


「……でかくね?」


リヴァ達が出会ったケガレと同じく、高さは軽く3m程。

足元の瓦礫を軽く踏むだけで粉々にする事実は、そのケガレの攻撃力の高さをそのまま示唆している。


「聞いてた頭と違うな」


ファーシスが落ち着いた声で喋る。


「……これで、報告書の内容には困らなそうだな」

「――ファーシス! 」


報告書の懸念が解決されたファーシスにいつの間にか近づいたケガレが、その太い足を振り下ろしてファーシスを踏み潰そうとする。

カイザンの焦った声がその行動がどれほど早かったのかの証明だ。

だが、


「……俺は義一さんに頼られてるんだ」


黒い瘴気を纏った足が迫る。


「――だから、負けない」


ファーシスの頭に足が振り下ろされ、先刻瓦礫に無造作にふるわれた攻撃力がファーシスを蹂躙する――直前


「『シャイン』」


先が三又に割れた光の槍が、ケガレをまるで豆腐でも貫くように貫いていた。

振り下ろされる足は止まり、ファーシスの代わりに死したのは巨大なケガレである。


「……なんだ。やっぱり、そんなに固くないな」


――ケガレから噴出するおびただしい量の血を光の盾で防ぎながら、ファーシスはケガレを冷たい目で見抜きながら呟いた。



         ■■■ 



天使達は1から7班にわかれて、3人1組で行動している。

1班は ファーシス、カイザン、ユミリィ

3班は サタ、スティーグス、レジィ

7班は リヴァ、アバン、ミカレ


である。

残りの天使達は地球のケガレの報告によって地球に送るか見送るかを検討される。

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