第8話

「――異形のケガレ?」

「は、はい。こう、体は3つあるんですけど頭は1つで、鞭をぐわーってやってきて」

「……わかった、取り敢えずサタにも聞くから一旦止まってくれ」


アバンは説明が下手だった。それこそ、庵野さんがストップをかけるほど。


           1


「なるほど、つまり今までのケガレよりも強い個体がいたわけか」

「え、あの、僕が説明」

「対策をねらないといけないッスね」


今いるところは探索船の会議室。

そして、会議室には中心にガラス張りの机があるのだ。その机の周りに、何人かの天使と庵野さん達人間がいるような感じだ。


「……サタの魔法で倒せたんだろ? なら、大丈夫でしょ」


白髪をはためかせて、空色の目でサタをみるのは、1班の中の1人、ファーシスである。


「でもそこそこ火力上げたよ? あれ、だいぶ固い」


それに返事をするのは、マゼンタの目でファーシスを見つめ返すサタだ。


「油断は禁物ッス。――でも、悲観しすぎてもよくないッスよ。……だから少しはポジティブにならないッスか? 優」

「い、いやでもアバンがボロボロになっちゃうくらいだし……」

「ユウキ、アバンとかそこまで強くねぇから」


病み上がりのアバンの頭をペチペチとしながら、カイザンがアバンへの皮肉とユウキへの心配解消を同時に済ます。


「――油断が断じられているのは、どんなケガレが現れようと同じことだ。各々、努力を怠るな」

「はい! 了解しました! 隊長!」


腕を組んでいた男が、重々しく口を開く。

隊長と呼ばれる男は、小鳥遊義一(たかなしぎいち)と言う。190cmという高身長であり、無表情だが執る指揮は的確なので、天使達からは尊敬されている人間である。

――そして、その義一の言葉がそのまま会議の締めくくりの言葉となった。


          2


場面は、会議が終わり次の日の朝まで早巻きされる。


「――リヴァがまだ医務室だから、暫く7班は探索休憩だ」


庵野さんが食堂で、天使一同に説明をする。


「なら、探索どうするんですか?」


ファーシスが、天使達が聞きたかったことを代わりに庵野さんに問う。

庵野さんは顎に手を当て、暫く俯き考えて――、


「……ファーシス達1班についでにしてもらおう」

「えっ」


ファーシスが心外とばかりに声を漏らす。


「義一もファーシスが頼れると言っていた」

「やります!!」


だが庵野さんは性格を掌握していた。

ファーシスは義一を尊敬しており、他の天使達より義一を優先する節があるのだ。


――かくして、視点はファーシス達1班に移っていく。

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