第7話

「スティーグス、いつもやめてって言ってるよね」

「僕頷いたことないもん」

「そこじゃなくてさ……」

「まぁ、レジィも許してあげなよ。スティーグスもあんまりやりすぎたらだめだよ?」


象牙色でボブの髪を揺らして、必死にサタは2人を宥める。

だが、


「サタが注意しないからつけあがるの! いっくら注意しても直さないんだから!」

「注意を聞く必要ないもんね〜」

「だから……っ!」


レジィは優しすぎるが故に注意できないサタの代わりに、スティーグスに注意をするが、相手が相手なのでのらりくらりと躱されていつも拳を震わせている。


「あの……」


その、暖簾に腕押しの2人を止めたのは


「アバンと、リヴァを、助けてくれない……?」


と、蚊の鳴くような声で助けを求めたミカレの言葉によるものだった。


          1

 

出力を上げて、再度魔法を発動しようとした瞬間、リヴァの視界が血で染まり、倦怠感に抵抗できずに鼻血を出して横に倒れる。

そして目を開けたリヴァのぼやけた視界は、世界がどうなっているのかを理解するために輪郭を鮮明にしていく。

鮮明になった世界は白色で、そしてリヴァはその白が天井であると気がついた。


「――気が付いたみたいだね」


ほのかに漂うタバコのにおいと、落ち着いた雰囲気の女性の声。

声のする横を見れば、予想通り


「キリュウさん……」

「ぶっ倒れたんだってね。……体に不調は?」

「……ない、です。ありがとうございます」

「感謝されることないよ。あたしの仕事だからね」


リヴァが現在寝ている場所は、医務室であろう。

横にいる艶のある黒髪を腰まで伸ばしている女性は桐生香澄美(きりゅうかすみ)という名をしており、天使たちからは「キリュウさん」と呼ばれている。

ここが医務室であることも確定だろう。

――キリュウさんは基本医務室からでてこないのだ。


「あと暫く寝ておきな。なにか伝えたいことがあったらアイツラに言っておくよ」


――無愛想に見えて、こちらを気遣ってくれる。そういう人なのだ、キリュウさんは。


「いえ、大丈夫です。言いたいことはきっとアバン達が皆に教えるので」

「……そうかい」


こちらに背を向けるキリュウさんを見て、リヴァも体を休めるためにベットにまた潜ろうとする。

――そこで、1つ疑問を思い浮かべた。


「そういえば、僕が倒れた原因わかりますか?」

「――ただの、疲れだよ」

「そう、ですか」


キリュウさんが質問に答える直前、すこし躊躇ったことに、リヴァは気付かなかった。



         ■■■




サタ


・11歳 ・女 ・158cm


魔法『サンダー』


清浄の天使の1人。

象牙色の髪とマゼンタ色の目。髪型はボブ。

誰に対しても分け隔てなく接する寛容で、大人しい性格である。魔法の操作の腕が立つ。

アバンと仲が良い。

使える魔法は雷系の魔法。

雷を自由自在に操れる。強い。

身長を気にするアバンのことを、可愛いと思っている。

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