第6話

稲妻が迸った瞬間、アバンはそれを誰がやったのかを理解した。


「アバン、ミカレ、大丈夫?」


案の定、アバン達を助けてくれたのはサタであった。いつもアバンと仲良くしてくれる少女だ。

だが、いつものように話す余裕はアバンにないのだ。

倒れたリヴァへの心配と、初めて見るケガレへの不安と、ここ1番の魔法を発動したことによる手応えと、色々が混ざり合ってもう限界だったのだ。


「サタ……リヴァを……」


――リヴァをお願い、と呟く前に、アバンの意識は暗闇に落ちていった。


          1


「本格的に大丈夫かなぁ……アバン」


心配の感情をそのまま声に出して、サタはアバンを背中に担ぐ。

アバンの意識のない無気力による重さと、この傷だらけでボロボロの服はアバンがよく頑張った証拠だ。


「サタ、助けてくれて……ありがとう」

「全然。困ったときはお互い様って言うでしょ?」


サタはミカレからの感謝に、少しズレた返答を返した。


「――サタ! やっと追い付いた!」

「レジィ!」


サタとレジィは親友であり、そして同じ3班である。班は3人1組なので、当然あと1人いるわけだが――、


「あれ、スティーグスは?」

「え? 私より先に行ったはずなんだけど」


首を傾げるレジィの背後に、1つの影が忍び寄る。

その影は両手を振り上げて、今にも振り下ろす雰囲気だ。そして、影に気付けないレジィはその両手を避けられず――


「――わぁ!」

「きゃあ!?」


少年の高い声と、レジィの驚く高い声が順番に響いた。


「ひっかかってやんの、レジィったら」


生意気をそのまま閉じ込めたように笑う少年は、今レジィの背後に忍び寄り両肩に手を乗せて驚かせた本人である。

名はスティーグス。臙脂(えんじ)色の髪にライムイエローの目をした、いたずら好きの生意気な少年である。



         ■■■



『地球』


ケガレが発生したことで人が住めなくなってしまった。

基本的に荒野や砂漠になっていて、植物はほとんど無い。

海や川は残っている。一見普通だが、瘴気が染み込んでいるので飲んだり浸かったりは出来ない。

天使達は地球で活動出来るように造られているが、普通の人間は防護服が無いと死んでしまう。

まともな生き物は居ない。

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