第25話 信じるために疑う
薄暗い地中通気ダクト内を歩く。
ノイカが今までの作戦時に使ってきたものとは全く別のルートを歩いているらしいのだが、地中通気ダクト内はどこも似たり寄ったりなので、彼女は見慣れた風景のように感じていた。
いつもと違うのは彼女の近くにカイト達がいないことだけだ。
他愛もない話をしながら歩いてきたのが遠い昔のように感じる。
名前をつけた後からアイと会話らしい会話が発生することなくここまで来ていたノイカは、あの騒々しさが恋しくなっていた。
そして沈黙は彼女の不安を助長させるのに十分過ぎたのだろう、仲間たちに近づいているはずなのにノイカが前へ足を進める度、彼らから一歩ずつ離れていくような……そんな感覚に陥っていた。
気が滅入りそうになるので別のことを考えようと、思考した彼女はふと思い出す。
何故ノイカたちレジスタンスがセントラルタワーを攻略しようとしたのかを。
そして彼女は目の前のアンドロイドを再度疑うという結果に至った。
「ねえ、一つ確認したいんだけど」
「何かな」
「AI搭載型アンドロイドは全てセントラルタワー内にある集中管理装置で監視と制御をされているって聞いたわ。……あんた、今もまだその管理下にいるんじゃないの」
これは今まで集めて来た情報をクインが解析した結果分かったことだった。
アンドロイドがどこかのサーバーに随時同期されているらしく、それが一体だけでなくすべてのアンドロイドがそのサーバーとやり取りしている形跡があるのだそうだ。
クインはそこが全個体を一括集中管理するサーバー……おそらくマザーコンピューターの役割を果たしているのではないかとも推理していた。
彼の推論が正しければ、アイもまた現在進行形で監視されているのではないのだろうか。
「ボクはもうマザーとの同期を行っていない」
警戒心を再度露にするノイカにアイは態度を変えることなく返事を返した。
……ひょっとしたらノイカがそう感じただけなのかもしれないが。
直ぐに信用できるわけもなく、彼女はまだ疑念を彼に向けていた。
「……本当かしら」
「本当だよ。廃棄処分が決定したスクラップはリンク切除した後、データベースからも
今のノイカに彼の状態を調べる術はない。
もし詳しく見るのならクインの元へ連れて行かなければいけないのだが……それよりも先にカイト達を救い出すのが先決である。
それに疑ってはいるが、彼女自体はアイを信じたいという気持ちの方が強いのだ。
「皆を助けた後、根掘り葉掘り調べてやるから覚悟なさい!」
「うん。わかった」
彼を完全に信じたいから、だからそんな口約束をしてしまったのだろう。
カイト達を助けた後もアイと行動を共にする前提で話していることに、ノイカは気付いていなかった。
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