第11話 エントランスにて、静かなる攻防
エントランス部分は玄関とロビーがあり、今まで通って来たフロアとは違って広々とした印象を受ける。
ただ相変わらずタワーの中央部分には天から奈落まで続く穴があり、それを囲うようにしてフロアが伸びていた。
ガラスで造られた大きな玄関扉の前にアンドロイド達が集まっているのが見える。
どうやら地上作戦部隊を掃討するために招集されたらしく、ざっと見ただけでも何十体もの個体が外へと出て行っていた。
エントランスは開けているので遮蔽物があまりにも少ない。そのため彼女たちは今身を隠している柱から数十メートル先の柱まで見つからずに移動しなくてはならなくなっていた。
物陰に隠れたまま、ノイカたちはアンドロイドの動向を伺う。
こちらに注意を向けることなく扉の外へ向かっているがここに留まっていても見つかる可能性は十分あるため、アンドロイドたちの視線がこちらを向いていない間に、ノイカたちは一人ずつ柱と柱の間を駆け始めた。
まずは柱の先にあるドアのロック解除のためアビーが先行して移動し、そしてリゼルが続く。機敏に動いたためか二人はアンドロイドたちに気が付かれることはなかった。
次にノイカが走り出そうとしたとき、カイトが腕を掴みそれを制止した。
彼女はどうして止めたのかと疑問に思ったが、彼の視線の先、一体のアンドロイドが何故か扉ではなくこちらを見ているのが分かった。
先ほどまでは他の個体と一緒に玄関の外へ出ようとしていたのに、まるでノイカたちがいることを知っているかのようにじっと柱に注意を払っていた。
「おい、何をしている! 早く外へ出て加勢しろ!」
こちらを見ていた個体が別の個体にそう声をかけられると、返答することなく玄関へと向き直った。
ノイカはカイトへと目くばせをしてから風のように駆け出す。そして間髪入れずにカイトが走り出した。
どうやら先に敵影もなかったようで、先行したリゼルたちはすでにドアの中へと入っていた。
ノイカも彼らに続きドアへ入り、その付近でカイトが来るのを待っていたが、カイトが柱の間を走りきる直前、ふと彼女の視界の端に先ほどのアンドロイドの姿が映った。
こちらを再度確認するようなアンドロイドの動きにカイトはドアの中へと転がり込む。確かにこちらを見つめるガラス球の瞳がいやに脳内にこびり付いていた。
「ねえ、カイト。さっきの」
「……長居するのが得策じゃないことは確かだな」
カイトはノイカにだけ聞こえる声でそう伝えると、リゼルとアビーに向かって先を急ぐように話しかける。
ノイカは早くなる鼓動に気が付かないふりをして三人の背中を追った。
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