第7話 合流
「おー、相変わらず仲が良いことで! こんな場所でも痴話げんかしてんのかぁ?」
「こら、リゼル。そうやってからかわないの」
金髪で体格のいい男性と彼をたしなめた女性が鞄をいくつも抱えノイカたちのもとへとやって来る。
見た目だけではなく中身もちゃんと重たかったようで、二人は慎重に鞄を床へと置くとノイカたちに向き直った。
真剣な表情の女性とは裏腹に、リゼルと呼ばれた彼はにやにやとした顔つきでノイカたちを眺めている。
「さ、俺たちのことは気にせず、続きをどうぞどうぞ」
「しないわよ、あんぽんたん」
ノイカが冷ややかな視線をリゼルへ向けてそう言うと、ノイカ以外の三人から「出た、ノイカの似非お嬢様言葉」という呟きが返ってきた。
ノイカは普段はお嬢様のような口調で話すのに、お嬢様らしからぬ単語が飛び出すことがあるのだ。そのため彼らからはよく『似非お嬢様言葉』と言われているが、彼女にとってはかなり不本意である。
八つ当たりの意味も込めて笑い転げるリゼルを無視し、ノイカは女性のほうへと声をかけた。
「アビー、無事で何よりだわ」
「武器の搬出に思ったよりも時間がかかっちゃったの。ごめんね、待たせちゃって」
「ううん、良いの。何事もなくて、本当に良かった」
ノイカは素直な気持ちを口に出すと、心配していたことが伝わったのかアビーは嬉しそうに微笑んでいた。
◇
アビーとリゼルが運んできた鞄には十分すぎるほどの銃や弾丸が詰め込まれていた。
この作戦にこぎつけるまでに様々なルートから仕入れた武器たちにノイカは思わず目移りしてしまう。
アビーやリゼルも各々好きな武器を手に取り装備しているのを見て、ノイカもガンホルダーを脚に取り付けそこにハンドガンを装備した。
満足そうにしている三人とは対照的にカイトだけはずっと難しい顔をしている。
彼は銃や弾丸ではなく、無造作に詰め込まれたヒューズを数えていた。
「なあ、アビー。警棒のヒューズは他の鞄にも入ってるか?」
「えっ? ……どうだったかな。セーフハウスにある分は全部詰め込んで来たはずだけれど」
カイトがアビーにそう声をかけると、彼女は左手を口元に持っていき思案する。
ヒューズの残数について問われるとは思っていなかったのだろう、アビーは彼女の一番近くにある鞄を漁りヒューズを探し始めた。
「でもなんでヒューズなんだ? 武器なら他のものでも平気だろぉ?」
カイトの質問に疑問を持ったのはアビーだけではなく、リゼルも不思議そうな顔でカイトへ問いかけ、彼の肩へ腕を回した。
「いや……俺の
カイトはそう切り出すと二人に先ほどダクト内で遭遇したアンドロイドの話をし始めた。
実弾を発砲した際に全く効いている感じがしなかったこと、攻撃をする中でアンドロイドに謎の硬さがあったこと。
カイトは話しているうちに段々と頭の整理がついてきた。
ヒューズは貴重なものなのでここへ運び込める個数に限りがあると知ってはいたが、鞄をくまなく探して確認したヒューズの総数はおよそ四十個、単純計算で一人十個しか使えない。もし本当に実弾武装が効かない場合、このヒューズだけが頼みの綱になってしまう。
カイトは言葉に緊張が乗らないように細心の注意を払って二人へと共有した。
「カイト~、作戦前でビビっちまったのかぁ? お前らしくないなぁ!」
「確かに、いつものカイトらしくないね。心配しすぎだよ」
カイトは普段から隠し事に慣れているからなのか、二人は彼の言葉を重く受け止めなかった。
確証のない情報だしカイトもこれ以上言及しようとは考えていない。それに下手に不安を煽っても士気が低下するだけだ。
そう思ってカイトはいつものようにおどけて笑って見せた。
「んなことねーよ! リゼルじゃあるまいし」
「はぁ!? 俺は別にビビってないぞ!」
「嘘だよ、それ。武器を保管しているセーフハウスから出た瞬間にずっと震えてたもの」
「おい、アビー!」
ケラケラと笑うカイトの服の裾をノイカは控えめに引っ張る。
彼は笑顔を崩すことなくノイカへと視線をやると、彼女だけは緊迫した表情のまま彼の目を見つめていた。
「ねえ、カイト。銃弾が効かなかった場合は何処を狙えばいいのかしら」
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