3-3
「そっかー。音楽のプロか。じゃあ、アーティストさんだ」
「まあ、そんなところだ。天は、実は知っていたんじゃないのか。彼女のこと。なんとなくでも」
「うーん、どうだろうね。音楽は聞かせてもらったことあるよ。いい曲だった。夏の歌だった」
「そうか。俺の聞いたのとは別の曲だな」
「へぇ、どんな曲?」
「星の曲。星を見る少年少女の曲」
「へえ、それも気になるね」
「なあ、いい加減教えてくれても良いんじゃないか?」
「なにを? (煙草すぱー)」
「お前がクラスメイトを探る理由だよ。興味本位とか言っていたけど、それ以外にもあるだろ」
「何が? (すぱー)」
「わざわざ俺を使ってまでする理由が。これじゃ、まるで探偵みたいだぜ。内情を探る探偵」
「お、いいじゃない探偵。探偵・矢澤」
「あのな」
「嫌なの? 久くん。今やってること。ほら、みんなと仲良しにもなれて、とても良いじゃない」
「でも、踏み込みすぎないといかないところまで踏み込まないといけない。心の奥を知らないといけない。本当の理由とは、そういうものだ。他人が土足で入っていいものじゃないんだよ、普通は」
「でも、普通じゃないでしょ
「それが、理由か」
「そうよ。何度も言ってるじゃない。あたしが知りたいだけだって」
「そうか。わかったよ」
少し間ができた。俺もなにを考えているのか、天も何を考えているのか。それを互いに互いを考える時間。彼女とは知り合って間もないし、付き合いはそこまで長くない。しかし、ここ数日の新しい生活の中では、一番長く時を共に過ごしている。面倒を見てもらっている。新しい生活を助けてくれている。そういう面では、彼女には感謝しないといけないなと思って、俺は彼女のことを見た。「なによ」と言いたげな顔で少し笑いながらこちらを見てきて、俺はもうしばらく付き合っても良いかなと思った。
「次は誰だ」
「榊原涼ちゃん。彼女のことは一番わからないわ」
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