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高速で飛んでいったクラフトの塊は、驚くほど柔らかに、塊同士でぶつかり、またクラフトの一部になる。
ムササビは辺りを確かめる。
薄暗く、真っ白い空間。
大理石造りのような壁や柱や階段。無機質で無表情な建造物。
人の気配はない。
(──んー、雰囲気的にクラフトの下層階の最初あたりかな……)
手に巻く魔導機器は未だ、《error》と《unknown》を繰り返し表示する。
(……多分、“再成形”されたせいで、上中階の結界符も魔導障壁もクラフト全域に散らばっちまったよなぁ……でも、鬱陶しい魔障の滞留はなくなったみたいだな──)
「──結果オーライ……なのか……?」
ムササビはぽつりと呟いた。
「さて、まずは、上層階に戻って、しらみ潰しに探すとしますか──」
薄い笑みを携え、ムササビは走り出した──。
「──あのぉ、ハヤブサさん、どうしますか?」
今にも潰れそうな不安な顔つきでハヤブサの顔を覗く、ノービス隊員。
「んー、カナタ君、この子たち、連れて、なんとか上層階まで行ってくれる?」
ハヤブサはカナタを見る。
「はい、そんな嫌そうな顔しないっ」
「あんた……ハヤブサさんは、どうするんですか?」
「私は、妨害波の影響が少ないとこ、探して、“緊急援助要請”かけてみるよ」
カナタは小さく頷く。
「大丈夫っ、とびっきりのランダー、連れてくっからさ!」
バシッとカナタの背を叩くハヤブサ。
「──痛えっすよ、なんも心配なんてしてないですから」
二股に別れた通路でハヤブサは足を止めた。
「よし、じゃあ、ここで二手に分かれようか。それじゃあ、ノービス君たちのこと、よろしく頼むねっ」
「わぁーってますよ、ハヤブサさんこそ、気をつけてください」
「私を誰だと思ってんのよっ」
──ハヤブサは不敵な笑みを浮かべ、カナタたちと別の道を行く。
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