7
先程、ビヨンドの大群と遭遇した地点からさらに奥へと進んで行く一行──
「──ハヤブサさん、さすがでした」
しげしげとハヤブサを見つめるナツモ。
「……なんか、なんでだろ、ナツモ君に言われると、なぜだか嫌味にしか聞こえないね」
「なんすか、それ」
「なんだろうね、褒められてる気が全然しないよね」
「意味分かんねえっす」
──奥へ進んでから、足元に僅かな揺れが走っている。
魔障の影響かと誰しもが思った、その揺れは次第に強くなり──
「何かいる」
ナツモは足を止める。
瓦礫に囲まれた小さな円形の空間──恐らくはクラフトの最下層、最奥。
そこに一つの白い塊──恐らくはこのクラフトの創造主「オリジン」
「あれが……」
「ええ、そうみたいだね」
オリジンとの距離はまだ遠い。
ランダーたちは物陰に隠れ、様子を窺う。
二足歩行型のオリジン。
白くのっぺりとした、マネキンのような体躯。
地団駄を踏むように、一心不乱に足で地面を叩いている。
さっきから感じていた奇妙な揺れの正体はそれであった。
「なんだか、弱っちそうだね」と、ハヤブサ。
地面を踏み続けるオリジンは自身を討つべく現れたランダーたちにまだ気付いてはいない。
「でも、一応、“Dミドル”だから、油断はできない」
オリジンを見つめ、ムササビが答える。
「どうしますか?」
強みを増す右腕の疼きを知らぬふりでナツモが尋ねる。
──オリジンが打つ振動は不快にランダーたちを揺する。
「コウセイ、サンザ、“前陣”でいってもらえる? 俺とケイと他の隊員は二手に分かれて、周りを警戒しつつ、四時と八時の方向で、ひとまず待機──」
ムササビの指示に、皆が一斉に頷く。
その僅かばかりの殺気に呼応したかのように、オリジンは動きを止め、ゆっくりとランダーたちを振り返った──
そこには目も鼻も口も耳もない。
殴って付けたような窪みがランダーたちを見つめる。
──不吉な悪寒が走る。
「コウセイッ!」
カナタとナツモはオリジンに向かい駆け出す。
オリジンは何をする訳でもなく、
拳銃を撃つカナタ。
その全てがオリジンに被弾し、ナツモの振る鬼包丁がオリジンの身体を真っ二つに斬り裂いた。
腐った木の枝を斬ったかのような感触。
そのまま、二人は大きく飛び上がる──
「──撃てっ!」
ムササビの掛け声と共に後方の隊員たちの一斉射撃。
不吉な悪寒を掻き消すようにノービス隊員たちは引き金を引く。
「──止めっ!」
立ち込める硝煙と砂煙。
「やったのか?」
誰かが呟く。
──引き金に掛かけた指先に張り付く緊張。
──暴発寸前の緊迫感をなぞる硝煙の臭い。
白い地面に散らばる粉々になったオリジンの破片。
「やったか?」
誰かが呟く。
固唾を飲み込む喉の音。
そんな隊員の後ろ首をひゅーうっと生温い風が撫でた。
その風は途端に力強く──
ビュウォゥッ!
突如、吹き込む強風。
辺りに充満していた濃厚な魔障がオリジンの残骸へと吸い込こまれるように集まっていく。
渦巻き、圧縮していく魔障。
オリジンを中心に巻き起こる旋風が一帯を掻き回す。
「マズイッ!」
ムササビが叫んだ。
その声が響き渡るより先、ナツモとカナタが動く──!
──しかし、横殴りの突風が二人の体勢を崩す。
「くっ」
「チィッ」
オリジンの残骸の上に浮かぶサッカーボール大の魔障の塊。
渦巻き、濃縮された魔障の塊。
ハヤブサとムササビが動く。
──が、オリジンの残骸の下から、大きな口が現れ、残骸ごと魔障の塊を喰らった。
その瞬間、クラフトが大きく揺れた。
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