6

「ナツモ君はさっきやったから、次は私の番ね」


ハヤブサはナツモを牽制するように飄々と話す。

「分かってますよ、この数じゃ、俺より、ハヤブサさんの方が適任です」


「なんだ、ちゃんと分かってんじゃんっ」

ナツモは涼しげに一言。


「前は任せてもいいんですよね?」

「誰に言ってんのよっ──」


──ハヤブサはビヨンドの大群に勢いよく飛び込んで行く。


ハヤブサに呼応するようにビヨンドの群れも一斉に、動き出す。


「来るぞ!」

カナタが叫んだ。


ノービス隊員たちの身体に食い付く強張りをよそに、ナツモ、ムササビ、カナタが迎え撃つ。

援護する間もなく──いや、「手出し無用」と言わんばかりの猛攻。


三人に圧倒される隊員たちの眼前、襲い来るビヨンドはバッサバッサと斬り倒されていく。


「はっ、肩透かしだな」と、カナタ。

「──こっちは問題ない、ケイ、そっちは?」


ハヤブサのイヤーカフからムササビの声。

「──数が多いわね」


ハヤブサは両手に持つ短刀でビヨンドの身体を斬り裂いていく。


「大丈夫か? 一人そっちにやろうか?」

「──いや、大丈夫。全然、余裕っ」


ビヨンドの群れに囲まれながら、それでもハヤブサは不敵に笑う。


彼女は一度、後ろに飛び、距離を取る──

──ビヨンドの群れは矢の如く、彼女を追う。


──姿勢を下げ、腕を交差させる。

ぎゅぎゅっと力を込めた脚。


ダッン!


──大地を蹴る。


走り来るビヨンドの大群へ突進。

一直線に貫く。

そのまま、前に、横に、斜めに、宙を、旋回し──斬撃は止まることなくビヨンドを斬り伏せていく。


──その技は、彼女の二つ名の由来ともされる神速の妙技。


“ハヤブサ斬り”


天空を翔ける隼の如く、魔物の群れの中を駆ける白刃の両翼。


縦横無尽に魔物を狩る一閃の斬撃。

彼女の姿を捉えることもできず、

ビヨンドは散る──


「おい、コウセイ、よそ見してんじゃあねえよっ」

ハヤブサの剣技を見つめるナツモにカナタが言った。


「──大丈夫だ。問題ない」

ナツモはハヤブサを見ながら、襲い掛かるビヨンドを斬り倒した。


「んっと、可愛げのねえ奴だな」と、カナタは眉を寄せる。


白刃の両翼が止まる。

ビヨンドの群れはもういない。


両手の短刀を鞘に納める。

「オールクリア」


── ハヤブサは不敵に笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る