Y年後-2 再会

「あっ、久しぶり! な感じはしないか。あれから結局結構な頻度で話してたもんね。何ならテスト勉強の時もつないで喋りながらしてたし。無料通話万歳、だね」


(うん)


「さて、改めて、大学合格おめでとう!」


(ありがとう)


「晴れて君も本州住み、ということで、まあこっちの生活には慣れたでしょ? もう来てから一か月経つみたいだし」


(そうだね。でも一人暮らしはこれからだから)


「そっか。これまでは親御さんいたけど、本当に一人だもんね。バイト先とかもこれからだもんねー」


(潮香さんも、大学生になって雰囲気変わったね)


「え、私そんなに変わったかなー。まあ髪染めて化粧したら変わるか。でも君も結構変わったよ? 高校が緩いって言うことは聞いてたけど、まさかピアス開けてるとは思わなかったよ」


(これ? 痛かったけど、なんか憧れて)


「へー、痛かったんだ。じゃあ私も開けなくてよかったかも」


(それは?)


「これ? ピアスじゃないよ? イアリング。こうやって挟むだけだから、簡単に外せるよ。そういえば、島に行った時も私付けてたなー。もしかして、私に憧れた? なんて」


(……)


「……あー、これガチっぽい。そっか。なんで?」


(大人っぽかったから)


「まあ、あの頃はそういうのに手を出したいお年頃だったからね。でもチキって今もイアリングだからなぁ」


(でも、似合ってる)


「似合ってる? ありがとう。やっぱりそういうところは変わらないよね。なんか安心する。あー、なんか高校生に戻ったみたいだなー」


(そっか。もう二年生だもんね)


「そそ。今から一年前は、華の大学生デビュー! だったけど、まあ疲れるよ。色んなサークル見たけど、自分に合う場所探すのに結構時間かかった。君は、うーん……」


(入れなさそう、って思ってる?)


「いやいや、別に、君もどこかに入ると思うし、入れるとは思うけど……なんか、君優しすぎるから、損しそう。それに変な虫もつきそうだし」


(変な虫?)


「結構嫌な人多いよー? めっちゃいじめようとする人もいるし、お財布目当てみたいな人もいるし」


(大変なんだね)


「そうそう。この前なんかさー……あ、また愚痴りそうになった。ほんと駄目よね。ていうか、まだ集合してからずっと立ち話だし。さて、目標の所行こっか」



*****



「ふわぁ、おいしかったー! あそこ私も行くの初めてだったんだけど、結構おいしい方だよ?」


(……うん)


「あれ? もしかして胃もたれしてる? 大丈夫?」


(うん、でも晩御飯はいらないかも……)


「あらら……ごめんね、付き合わせて」


(ううん、おいしかったから、また行きたい)


「え、ほんとに!? また行きたい? やったー! また行こうね!」


(すごく嬉しそう)


「嬉しいよ。あんまり私の知り合いで好きそうな人いないし。それに……いや、何でもない」


(え?)


「さっ、じゃあこれからどうする? まだ昼真っただ中だけど。私は今日バイトオフだし、結構暇してるんだけど」


(じゃ、じゃあどこか行く?)


「君も大丈夫? じゃあまた案内してあげる! 次はどこ行こうかなー」


 うきうきした様子で駅の方へ歩き出す潮香さんを見て、僕は心に温かい気持ちを抱えて距離を詰めて歩いた。

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潮の香りが好きだから 時津彼方 @g2-kurupan

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