Lv.-18 舞踏会

 レベル3。今日は朝から踊っていた。いや、踊っている風に見えるぐらいになるように踊る練習をしていた。


「これは……駄目ですね」

「まさか勇者殿がここまでとは。剣を振るっている時は踊るように立ち回っているのに……」

 外野が何か喋っているが、突っ込む余裕もない。


「はい、1、2、3、2、2,3……」

 簡単なステップではあるが、まったく足がついていかない。

 レベルが3に下がったせいかもしれない、いや、そうということにしておきたい。


「……お疲れ様でした。まあ、付け焼き刃ではありますが、今日1回踊るぐらいでしたらこれで良いでしょう」

「……ありがとうございます……」

 息も絶え絶えな俺に対し、講師の婦人は涼しい顔だ。


「お疲れ様。まさか勇者様がダンスが苦手だとは思わなかったわ」

「剣舞の披露とかの方が良かったかもしれないな」

「できればどっちもなしでお願いしたいがな」


 なぜ、朝からこのようにダンスの練習をする羽目になったのか。

 それは、急遽舞踏会が開催されることになったからだ。

 いや、魔王討伐を祝っての舞踏会であるから前から決まってはいたのだが、魔王の呪いの関係で慌ただしくすっかり忘れていたのだ。

 できれば欠席したいところであったが、まあ、曲がりなりにも主役であって欠席することができなかった。

 また、ミナとアイギスにも是非出席して欲しいとお願いされては断れるはずもない。


「勇者殿、この後は衣装合わせとなっています」

「……行こうか」


 衣装合わせという名の着せ替えを延々と行わされ舞踏会が始まる前に俺のライフは0になる寸前だった。



 ◆ ◇ ◆



 舞踏会開始前に服を着替えさせられ、扉の外で二人を待っている。

 室内には既に人が集まってはいるが、主役でもある俺たちは最後に入場することになっているらしい。


「勇者殿、お待たせしました」

「勇者様、いかがですか?」


 真っ白いドレスをまとったミナとアイギスが侍女に先導されて歩み寄ってきた。

 如何にも王女様や貴族の娘らしい気品を漂わせている二人を思わずじっと見つめる。


「勇者様?」「勇者殿、どうしました?」

「あ、いや、見惚れてた……」

 正直に告げる。

「……」

 二人とも真っ赤になって、俺の両脇を固めるように腕を組んだ。

「さあ、皆さんをおまたせしてもいけません。行きましょう」


―― それでは、この度の魔王討伐の立役者でもある勇者様の入場です……










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