Lv.-15 飲食店事情
レベル6。もはや普通の人並みのレベルとなった。ステータス的には高いが誤差範疇であろう。
「では勇者様、王都デー……観光に行きましょう!」
王女であるミナと近衛騎士団長でもあるアイギスに挟まれて城下町へと繰り出した。
護衛のため、付かず離れずの距離を保って近衛騎士団員達も数人付いて来ている。
王都の城下町はいわゆる剣と魔法の世界っぽい街並みではあるが、勇者召喚で文化的にテコ入れされていた歴史上、日本的な店もいたるところにあった。
「こちらが、元祖ラァ麺を出すお店です。私はこちらのこってりオークラァ麺がおすすめです」
「姫様、勇者殿に食べていただくのであれば、やはり、本家ラァ麺のあっさりコカトリスラァ麺しかありえません」
道の真ん中で王都では有名な二人がお互いの主張をぶつけている。
次第に周りの野次馬が増えてきた。それぞれの店からも店員が出てきて野次馬の整理を始めている。また、さり気なく店に誘導しているのは商魂たくましいと言うべきか。
ヒートアップしている議論の収拾を騎士団員達にまかせ、俺は目についたカレェ屋に入った。
「美味い。懐かしい日本のカレーだ」
思わず目頭が熱くなる。勇者直伝カレェ飯と書かれたメニューは間違いなくカレーライスだった。
「おや、もしかして勇者様でしたか?」
水を足してくれたおばちゃんに俺のつぶやきが聞こえたらしい。
「ああ、だけど内緒にしといてくれるか、バレるとうるさいからな」
「えぇ、えぇ、それはもちろん。ところで、勇者様お墨付きって喧伝しも良いですかね?」
王都には勇者ブランドの店がどれだけあるのだろう。むしろ、勇者関連でない飲食店の方が少ないのかもしれない。
そんな事を思いながら無料となったカレェ屋を後にした。
◆ ◇ ◆
「勇者殿! 勝手にいなくならないでください!」
「そうですよ、一人でどこかに行ってしまってはデー……観光にならないじゃないですか!」
のんびりと街並みを眺めながらふらついていたところに二人が駆け寄ってきた。
「いや、お前らが揉めるから先に昼飯を済ませてただけだ。それに、一人じゃなかったぞ、なあ」
一緒に歩いていた副団長の方を見る。
「ええ、勇者様の護衛が私の役割ですから。あ、カレェ飯美味しかったです」
にっこりと勝ち誇ったような微笑みを副団長は浮かべていた。
◆ ◇ ◆
「まったく、ほんとに置いていくなんて酷いです」
「そう思うんだったら二人して路上で騒がないようにしてくれ」
合流してひとしきり騒いだ後、俺たちは兎を撫でながらくつろいでいた。
どうやら、この世界に猫獣人は居るが、猫そのものは居なかったらしい。
そこで、もっとも手近にいた兎の魔獣、ようは角の生えた兎を飼い慣らし、角を削ったり、角の短い個体を厳選したりとしたらしい。昔の勇者の情熱恐るべしだ。
そんな情熱の元にオープンしたのがこの兎カフェだったらしい。今やチェーン店として各都市に必ず一つはある程の人気店となっている。
ちなみに、カフェの隣には兎の串焼き専門店もあり、そちらもすごい人気らしいと聞いた時にはどう反応すればよいか分からなかったことを記録しておこう……
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