Lv.-13 女神の恩恵

 レベル8。帰還陣を早目に使用するのは難しいことがわかった。


 解呪も駄目、帰還陣も駄目となるとそろそろ万策尽きた感がある。

「それでは、何か思いついた人は居ますかー?」

 若干投げやりに案を求める。


「はい!」

 ミナが茶番に付き合って手を挙げる。

「それでは、ミナ君、意見をどうぞ」


「帰還可能となるまで仮死状態にするというのはどうでしょう」

「なるほど、氷漬けにするとか、あ、石化なら呪いの進行もない可能性があるな」


 確かに、石化状態であれば完全に仮死状態になり、呪いも発動しないかもしれない。

「かなり有効な案だな。俺以外だったらだけど……」

「あ、勇者様の場合、女神の恩恵の効果で効かない?」

「そうなんだよなー、女神の恩恵の効果でレベル99までの状態異常は無効。おそらく石化しない」


 女神の恩恵は勇者召喚の際の女神との契約で与えられる。

「基本的な効果として、こちらの言語の読み書きが出来るようになるでしたか」

「状態異常無効と取得経験値や熟練度のアップも含まれる。ただし、この効果の倍率自体は要望しだいだと思う」

「ちなみに勇者様は?」

「最大の3倍だな。なお、この効果にステータス増加量アップも含まれてたんじゃないかと思っている」

「勇者殿、それだと効果が凄すぎませんか?」

 とはいえ、勇者は召喚時はレベル1である。その上、モンスターなどいない平和な世界からの召喚なので魔王討伐のためにはこれぐらいは必要と思う。

「それでも、魔王のレベルには全然足りなかったけどな」


「魔王……前勇者様の女神の恩恵は何だったんでしょうか?」

 女神の恩恵は基本パック的な恩恵の他に召喚者固有の恩恵もある。

「俺と同じく、レベルアップが早くなる系統だとは思うんだよなー。それなのに、あの圧倒的なレベル差……。恩恵取得の時点で負けた気がする……」

「そういえば勇者殿固有の恩恵の効果は?」

「モンスターを一定時間内に連続で倒すと得られる経験値倍率が更に上がるやつだな。魔王の瘴気で魔物が活性化してたたから、レベルアップに関しては最高効率と自負してたんだが……」

「それであのレベルアップ速度。そうなると前勇者はそれ以上の上手い方法があったのですかね」

「おそらく、レベル奪取か吸収系じゃないかと思う。なにせ俺がその手の要求をした時には断られたからな。おそらく何らかの問題バグがあったんだろうよ」

 勇者が魔王化するような異常事態だ。恩恵に問題バグがあったとしても何らおかしくはない。


「……くっ、レベルが下がったな。ということは昼ごはんを食べにいくか」

 黒い靄が湧き出し、レベルが8から7へと下がる。


「勇者様……魔王の呪いを教会の鐘代わりに扱うのは流石に……」

「ふふっ、まあ、それも良いではないですか。今日は東の食堂に行きましょう。新作デザートが出るとの噂です」

「え、アイギス、それが本当なら急ぎませんと。さあ、勇者様も早く」

 二人に両腕を掴まれて、食堂に向かった。


「……勇者様達が頻繁に召喚されていた時代、この時の女神の恩恵は特に固有の効果はなかったと聞いている。まあ、一般人に比べてかなりレベルの上がりが早かったらしいがの」

 デザートを頬張っていた魔導師団長にも女神の恩恵の事を聞いたが、特に目新しい情報を得ることはできなかった。

 しかし、代わりに王都で人気のデザートの美味しい店、トップテンの情報は得ることができたのでこれはこれで良かったと思っておこう。




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