Lv.-05 魔物
レベル16。今日も朝から王都への街道をひた走っていた。行きは数限りない魔物との戦闘をして通過してきた街道も静かなものである。
馬車が少し速度を落とす。
―― 「北150メートルに3匹だ!」
稀にはぐれたような
「魔王が討伐されてモンスターの動きが自然になったな」
騎士団員達に討伐されていく魔物を眺めて以前の動きを思い出す。
「自然に……ですか?」
「前はひたすらに攻撃してくるだけで、今みたいに状況が振りでも一切逃げる素振りを見せなかったし、攻撃パターンも単調で、まあ、倒しやすい敵ではあったな」
行動パターンの決まったボットほど倒しやすいものはない。それが、今見ているモンスターは中に人がいるかのような多彩な動きをしているし、それぞれの動きに個性が見て取れる。もっとも、モンスターなので中に人がいることはないのだが……
もっとも、モンスターが大量にひたすら攻撃するために集まってきてくれていたのは俺にとっては都合が良かった。
俺のもらった女神の恩恵の効果の一つとして取得経験値倍増がある。特殊な効果として連続してモンスターを倒すたびに効果が強化されていく、つまり、連戦すればするほど経験値が手に入ったのだ。
この女神の恩恵のお陰で前人未到のレベル20まで最速で達することができた。もっとも、魔王はレベル100という、それこそ通常は達することのできないレベルだったわけだが……
「勇者様……?」
少し物思いにふけっていたようで、王女さんが話しかけていたのに気が付かなかった。
「ああ、悪い。少し戦いの日々を思い出してた。で、どうした?」
「もうすぐ正午になりますので……」
正午には魔王の呪いでレベルが下がってしまうのだ。
ちょうど、うっすらと黒い靄が体を包む。少し気だるさを感じ、レベルが15へと下がっているのを確認した。
一般に瘴気と言われるこの黒い靄は、
また、瘴気が多くある場所からはモンスターが産まれ、更にはその周辺がダンジョンと化すこともある。
そう言えば、魔王も最後には黒い靄となって消えていった。彼女も
「勇者様、お体の調子は大丈夫ですか?」
王女さんが不安そうにこちらをうかがっている。
「レベルが下がるのも5回目ともなれば慣れたもんさ。それに、どうやら基礎ステータスが落ちるわけではなさそうだから普段の生活には影響はなさそうだ」
レベルが上がったといって、急に力加減ができなくなって物を壊したりするようなことはない。あくまでも最大で出せる力が上がる等、意識すれば出せる能力が引き上がるだけなのだ。
「とはいえ、どれだけ能力が落ちているかは把握する必要があるな。午後は騎士団と一緒に外でモンスターを警戒しておくことにするよ」
レベルが上がらず、経験値も得られない身ではあるが、モンスターとのバトル自体は嫌いではない。
「それなら私も勇者様と一緒に外で警戒します!」
「姫様! 姫様まで外に出たら馬車の意味がないではないですか。それに、もう魔王討伐は終わったのです。前から言っているように王女様らしく……」
団長の小言が続く中、俺はそっと馬車を抜け出した……
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