Lv.-03 解呪

 レベル18、特に行動に支障はないが、既にレベルが2もダウンしている事実が辛い。

 昨日の夜遅くに町について俺たちは騎士団員が事前に確保しておいた宿で休んだ。

 そして魔王の呪いについて調べるため、早朝から町の教会に来ていた。


「神父様、朝早くから申し訳ありません」

「いえいえ教会の朝は早いですから問題ありませんよ、王女様」

 

 神父様の部屋に通された俺たちは事情を話し、呪いの鑑定をお願いする。

「魔王の死の呪いですか……聞いたことはありませんが、通常、呪いだけで人を殺すことはできません」

「では、勇者様は死なずにすむのですか!」

 身を乗り出す王女さんに対し、神父様は静かに首を振った。


「『死の呪い』には二重の意味合いがあります。まず、人を殺せる呪いです。そのように強力な呪いは通常の方法で掛けることはできません。掛ける側も命を対価とすることになるのです。このように両者にとって『死の呪い』なのです」

 もっとも魔王と勇者による『死の呪い』ですから、まずは調べてみましょう、そう言って神父様は部屋の奥から水晶玉を持ってきた。

「これを使えば呪いの有無と呪いのレベルがわかるのですよ」


 この世界には様々な種類の鑑定水晶がある。それらの中にはステータスに現れない特殊な状態を調べられるものもあり、この呪いの鑑定用の水晶玉もその一つだ。


 水晶に手をかざすとうっすらとした黒い靄が現れ、呼応するかのように水晶の中央にも黒い靄が生じた。

「こ、これは……」

「なにかわかりましたか?」

「普通ですとこの水晶に呪いのレベルが出るのですが……」

「ですが?」

「呪いのレベルが表示されていない……いや、0となっていますね」

 呪われていないのでは? と王女さんが首をかしげる。

「いえ、残念ながら呪われているのは間違いありません。呪われていない場合はそもそも呪いのレベル表示は出ないのです」

 神父様は疲れたように天を仰ぎ、女神に祈った。

 流石魔王の呪いというところか。いや、そもそもレベル100の呪いなのだ従来の水晶で対応しているはずがないとも言える。


「水晶が壊れているということは?」

 諦めきれないのか王女さんがそんなことを聞いている。

「以前、勇者様に倒していただいたリッチの呪いがレベル12でしたので10以上の呪いを鑑定できるのも間違いありません」


 俺たちがこの町に来たとき、ちょうどリッチが魔王軍の尖兵として町を支配しようとしていた。

 レベル12の呪いは神父様では解くことができず、王都の司教を急遽呼び出して対処したのだった。

 この世界でレベル10はランク2とも呼ばれ超越者の扱いである。ランク2の呪いをランク1では聖水等の補助があったとしても決して解くことはできない。

 もっとも、この世界での最高ランクはレベル20の俺のランク3であったことを考えると、ランク11とも言える魔王の呪いなど解けるはずがない。


「勇者様、王女様、お役に立てず申し訳ありません」

 しきりに頭を下げる神父様にお礼を言い、昼前には一旦宿屋へと戻った。


「魔王の呪いについてはもっと調べる必要がありますね。城に戻れば何か文献があるかもしれません」

 王城には古今東西の文献が集められているという。神話の時代から脈々と続く王家ならではだ。

「王都には既に早馬を向かわせています。我々も明日の朝には王都へ立てるよう準備中です」

 相変わらず団長の手際が良い。


「うっ……ああ大分この感覚にも慣れてきた」

 昼になったのだろう。微かに教会の鐘の音が聞こえる中、黒い靄とともにレベルが1つ下がった。








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