Lv.-02 レベルダウン

 レベル19。一夜明けて再度確認したが、確かにレベルが下がっていた。

「夢だったら良かったんだが、やっぱりレベルは19だな」

 昨日は魔王城の入り口付近で結界を張って夜を明かした。


 テントから出ると早速王女さんが寄ってきた。

「勇者様、とりあえず近くの町まで戻りましょう。教会に行けば呪いの詳細がわかるはずです」


「姫様、落ち着いてください。まずは朝食です。部下が用意していますのですぐに食べられますよ」

 団長は王女さんの近衛騎士団の団長だ。

 王女が勇者である俺に無理矢理ついてきたため、近衛騎士団が実質勇者軍となっていた。


 簡易的ではあるが、十分な朝食を食べている間に様々な報告を聞いた。

「まず、魔王討伐と共に付近の魔物はすべて消えたようです」

「また、魔王城から近くの町への通路ですが、問題なく使用できることを確認しています」

 魔王城は王国から遠く離れたところにあるわけではなく、目と鼻の先というほどではないが、かなり近いところにあった。

 ただ、その通路が隠蔽されており、付近を強力な魔物が徘徊するようになったため、たどり着くのに時間を要したのだ。


 魔王城から近くの町への最短経路は海の下を通っている巨大な洞窟だった。

 海上の経路は荒れ狂う海と強大な海洋モンスターで使用することは出来ない。

 また、陸路はこれまた険しい山を超える必要があった。


「スラッシュ!」

 剣からでる斬撃があったさりと洞窟にあらわれるモンスターを両断していく。


「流石は勇者殿です」

「レベル20から19に下がったとはいえ、まだまだ人外の領域だからな」

 なお、モンスターを倒しても一切経験値が入っておらず、レベルが上がらなくなっているのは間違いない。

 洞窟の中の魔物もほとんどいなくなっていた。

 稀に出てきても1、2匹であり、魔王城までたどり着いた俺たちの敵ではなかった。


「勇者様……そろそろ、お昼ではないかと」

 王女さんが不安そうに見る。


『これより1日毎にお前のレベルは1下がる』


 黒髪黒眼の魔王の姿を思い出した。


「うっ……」

 体から黒い瘴気が溢れ出てきて、少し気怠い感覚があった。


「……っ! 勇者様! 大丈夫ですか?」

「ん、あぁ、前回程ではない、やはり、20から19と18では違うんだろう」

 ステータスを確認するとレベルは18に下がっていた。魔王が死んでも呪いは残り、1日毎に1下がるのが確定した。


「死の呪いか……レベルの最低は0なんだよな?」

 この世界の住人はレベル0で生まれ、1歳になるときにレベル1となり、ステータスを得る。

 レベル0の間は女神の加護があると言われ、ダメージをうけない。


「えぇ、勇者殿は召喚時点でステータスがありレベル1でしたが、この世界ではレベル0で生まれます」

「俺が21日後に死ぬというのは、いや、もう20日後か? レベル0から更にレベルが下がった時に死ぬということか」

「人はレベル0の前は天界、神の領域に居ると言われていますので、ここでの死は天界に戻されることでないかと私は考えます」

 団長は敬虔な女神信者でもある。死イコール神の領域に戻るという意味で辻褄は合う。


「ところで、実際にレベルが下がった事例はあるのか?」


「リッチ等のモンスターがレベルドレインを行うと聞いたことはあります」

 王女さんがここぞとばかりに発言した。

「それで、どうなるんだ?」

「レベル0から下げられた話は聞きませんね。リッチに会うのはかなり高レベル帯ですし、低レベルで生きて帰った例は聞いたことはありません」

 実例においては団長の方が頼りになりそうだ。


「はっきりしたことは不明か……そうなると、やはり魔王の言う通り死ぬ前提で対策を立てるしかないな」

 勇者が死ぬまで後20日、対策を練るためにもまずは王都まで戻る必要がある。


 この日、かなり遅くはなったが近くの町までたどり着いた。


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