第11話 依子の同窓会
朝から依子は中学生時代の
依子の同級生と言う事は勿論、昌士の同級生でもある。
依子らは、たまに会うことはあっても三人揃って会うのは還暦の同窓会以来、二十年ぶり位になる。
「昌士、今日幸子ちゃん達とご飯を食べに行くけれど、昌士も一緒に来るかい?昌士も皆と会うのは還暦の同窓会以来じゃないの?」
「あぁ、そうだな。でも幸子達と言う事は一夏や艶子も一緒だろ?久し振りなんだし四人で食べてくると良い」
「そう?分かった。帰りは遅くなるかもしれないからね」
「分かっとる。楽しんでいってらっしゃい」
少し苦い顔をして、そう言った昌士の表情を気にしつつ、依子を家を後にした。
「あぁ~さっちゃん久しぶり!いっちゃんと艶ちゃんも久しぶり!元気だった?」
「依ちゃん久しぶり!元気だったよ。膝は痛いけどね」
「依子ちゃん変わらないねぇ!私も元気だよ」
「私も元気だよ!いまだに風邪なんかひいたこと無いよ!依子も元気そうね」
駅前の喫茶店に向かう道から、久し振りに揃った四人の同窓生達の会話は弾んでいた。
四人はそのまま喫茶店に入るとそれぞれ飲物と軽食を頼み、昔話に花を咲かせていた。
四人が揃うと時間があっという間に過ぎていった。
最近の自分の事やお互いの家庭の事、他の同級生達の近況や他愛もない事。
そして学生時代の事に話は落ち着く。
小学生の時は誰々が好きだったや隣のクラスの誰々が格好良かったなど。依子達は幾つになっても乙女なのだ。
「そう言えば依ちゃん。昌士君は元気?」
幸子がニヤッとしながら唐突に依子に話題を振ってきた。この話になると必ず昌士の話になる。
「昌士は全然変わらないよ。いつも偉そうにしてるよ」
「昌士君らしいね~。でも優しいんでしょ?」
「そうそう、いつも何だかんだで依子ちゃんの
事ばっかりだったからねぇ」
「そうだ、依ちゃん。あのね、昌士君に私達があの時はゴメンねって謝ってたって言ってて欲しいんだけど」
幸子がそう話すと、一夏と艶子も頷いていた。
依子が「何の事?」って聞いたが三人とも結局、何の事とは教えてくれなかった。まぁ依子も是が非でも聞こうとはしない為、結局「良く分からないけど謝っておくね」と言うことで落ち着いた。
それからどれくらい話していたのか、随分と時間が経ったようだった。
「さて、この後どうしようか?」
「このまま晩御飯まで食べちゃう?」
「良いね!依子ちゃんどうかな?」
三人が盛り上がっている中、依子は笑いながら「私はねぇ~」と返事をしている最中だった。聞きなれた声が依子の事を呼んだ。
「依子。もういいのか?幸子、一夏、艶子も久しぶりだな」
「あっ、昌士君。久しぶりだね」
「依ちゃんのお迎え?」
「そうだ。ほら依子帰るぞ」
「と言う訳で今日は楽しかったね!さっちゃん、いっちゃん、艶ちゃん。また会おうね」
そのまま依子と昌士は三人に別れを告げ、駅へと向かっていった。
残された三人は、そんな依子と昌士の背中を見ながら、依子には言わなかった昌士への還暦の同窓会の日の事について話していた。
「昌士君は今でもちゃんと依子ちゃんの側にいるんだね」
「そうね、私達が昌士君に依子の事をどうするのかと聞いて、心配することはなかったね」
「えぇ。昌士君の「俺達には俺達の形がある。それをお前らにとやかく言われる筋合いはない」って言葉。今もあぁやって見せつけられるとねぇ」
三人は依子と昌士の二人の形を見ながら微笑んでいた。
「私達はこのまま晩御飯まで食べていきましょうか」と学生時代そのままに依子と昌士とは反対の方へと進みだした。
続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます