第6話 好みを知っている話
依子が昌士の家にお萩を届け自分の家に戻ってきた後の話。
今日は依子の妹、
「姉さん。昌士さんは家にいたの?」
「えぇ居たわよ。昌士は大概家に居るからね。そう言えば今日は知義さんも居たわね」
「あら、何だかんだで昌士さんの家には誰かが来ているのね。それでお萩は受け取ってもらえたの?」
「知義さんからもお萩を頂いていたみたいよ。でも昌士は私のお萩しか食べられないから、もう少ししたら知義さんと二人でここに来るわよ」
「えっ、どう言う事なの姉さん?」
「そのままの意味よ。昌士はお萩と言うか甘いものが苦手なの。私も最初は気が付かなかったんだけどね、初めて昌士にお萩を作ってあげた時凄く喜んでいたからね。お萩が好物だと思っていたの」
「それで?」
「その後にも何度か作ってみたんだけど、何だか無理して食べていたような気がしたの」
「そう言えば姉さん一時期お萩を沢山作っていましたね。もしかして昌士さんにあげるために?」
「あの喜ぶ姿が見たくてね。作ったものは結局食べてくれるんだけど何かが違っていて。それで思ったの。もしかしたらお萩が苦手なのかなって」
「あれ?でも姉さん結局ずっとお萩作ってたよね?」
「昌士を良く見てたらね、お萩が苦手なんじゃなくて甘いものが苦手って分かったの。それに最初に作ったお萩に甘みが増すかもと思って塩を入れてた事も思い出してね。それで塩味のあるお萩を作ったら喜んで食べてくれたって訳」
「相変わらずなんだね姉さんは。でもあまり塩分の取りすぎは良くないんじゃないの?」
「そうね、だから今は塩お萩の減塩とあわせて排塩を促す料理も作ってるのよ」
「それってそのトマトのサラダ?そしてそれを姉さんは今でも続けていると。もういい加減一緒に暮らしたら?昌士さんだってそうしたいはずだよ?」
「それとこれとは別。それに私は」
依子がそう言いかけた時、玄関から昌士の声が聞こえ、依子が玄関を見ると予想していた通りのお萩を持った昌士と知義の姿が見えた。
「依子!知義がお裾分けしてくれたお萩が余ったんだ。悪いが一緒に食べてくれ。それと何かさっぱりするようなものも作ってくれるか?」
「依子さん。何だか御免なさいね。先輩が余ったお萩を依子さんの所に持っていくって聞かなくて」
依子は「ほらね」と依江に向かって笑うと玄関に向かい「二人ともお上がりなさい。ちょうどトマトのサラダ作っていた所だから」と話しかけていた。
依江はそんな姉の姿にやれやれと呟く事しか出来なかった。
続く
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