第5話 お萩が好きな理由
今日は昌士の家に知義がお萩を持ってきた。
「先輩、家でお萩を沢山作りまして。お裾分けに来ました。先輩お萩好きでしたよね」
「おぉ知義、有り難うな。でもなワシはお萩があんまり好きではないんだよ」
「あれ?先輩昔から良くお萩を食べていたと思っていたのですが」
「まぁ確かに昔から何かと良く食べてはいたけどな。あんまりに甘すぎるのは苦手なんだよ」
昌士と知義がそんな話をしている時だった。昌士の家にお萩を持って依子もやってきた。
「昌士、あんたの好きな塩お萩作ってきたよ。昔から良く食べてたでしょ。あら知義さんこんにちは。珍しいわね、昌士の家に居るなんて」
「依子さんこんにちは。今日は昌士さんにお萩のお裾分けに来たんです」
「あら、そうだったの。良かったわね昌士。お萩が沢山食べれて」
「こんなにも沢山食べられるか。知義、依子が折角作ったんだ。知義も一つ食べていけ」
「依子さん。僕も一つ良いですか?」
「どうぞお食べになって。私は昌士にお萩を届けに来ただけだから帰るわね。知義さんゆっくりしていってね」
「依子の家と違うだろうに。それを言うのはワシの台詞だ」
「昌士はありがたく私のお萩を食べとき」
依子はそう言うとお萩の入ったお皿を昌士に渡し隣の自分の家へと帰っていった。
昌士は知義と依子の持ってきたお萩から依子の作ったお萩を取ると一口食べ始めた。
「先輩、やっぱりお萩好きじゃないですか」
「だから甘いのは好きじゃないって言っただろ?知義よ。依子の作ったお萩を一つ食べな」
「それじゃあ一つ頂きますね」
知義が一口お萩を食べると少し眉をひそめた。
「なっ、塩辛いだろ」
「先輩これは」
「依子のお萩はな、ちょっと多めの塩が入ってるんだよ」
「どうりで。それにしても依子さんお料理上手なのにお萩はどうして辛いのでしょう?」
「それはな昔、依子もワシも若かった時に依子が初めてワシにお萩を作ってくれたんだよ。ベタに砂糖と塩を間違えてね。だけどワシは依子が初めて作ってくれたって事が嬉しくて喜んだのさ。それを依子はワシがお萩が大好物だと勘違いしたようでな。それ以来何かあればお萩を作ってくれるようになったって訳さ」
「じゃあ先輩、本当に特別お萩が好物って訳ではなかったんですね」
「まあ、依子のお萩は甘すぎないからこれは食べるんだけどな」
そう言って昌士は既に二個目のお萩を食べ終え三個目のお萩を口に運んでいた。
知義はそんな塩辛いお萩の二口目に中々、手が進まないのであった。
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