第79話 誰が、ケイタをさらった?

「じゃあ…ケイタを誘拐したのも、計画のうち?」

 さらにアキが聞くと、ノワールはクルリと背を向けて、窓枠に

足をかける。

「そろそろ、ゼペットじいさんの家だ。

 あの人に聞くんだな」

そう言うと、アキが何かを言い出すまでに、スルッと窓から、外に

飛び出して行った。


「あっ、逃げた」

 それにしても、どこからすり抜けたのだろう?

すでに黒猫の姿は、もうどこにも見えなかった。

「黒猫ってね、魔女の使い…というから、ノワールもきっと、

 そうなのかしらねぇ」

カガリはしみじみと、感じ入った言い方をする。

(感心している場合じゃあないわよ!)

こういうところ…自分とは違う、とアキはそう思う。


 馬車がグングンと、降下していく。

「こういうのって、便利よねぇ」

さっきまで、イライラしていたアキも、途端に機嫌が直る。

(アキちゃんって、ホント、単純なんだから)

カガリはひそかに笑う。

「あっ、カガリちゃん、私のこと、バカだと思ったんでしょ」

すぐさま、アキが反応する。

「そんなこと、ないよぉ~

 そろそろ、着くみたいよぉ」

 次第に、下の様子が見えてきた。

さっきは海が見えていたけれど、今度は可愛い街並みが見えている。

「きっとケイタくん、この辺にいるわよ。

 何か食べているんじゃあないの?」

アキを励ますように、カガリが声をかけると、その時フワッと

いい匂いがしてきた。

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