第78話 シッポは反則!

「じゃあ…ボクの出る幕じゃあないねぇ」

 すぅっと、ノワールは身体を起こすと、窓に近付く。

「ちょっと、待って」

ぐぃっとアキが、ノワールのシッポをつかむと、

フギャア~!!

凄まじい怒声を上げて、ノワールは毛を逆立てる。

「ごめん、ごめん」

引っかかれる前に、アキはあわてて手を離す。

「シッポは、反則よ」

カガリも、アキをたしなめる。

「だからぁ~ごめんってば!」

そう言うと…

「でも、消える前に、ちょっと話をさせてくれても、いいじゃ

 ないのぉ」

あわてていたんだってば!

ブスッとした顔で、アキは言い返す。


「ま、それはそうか」

 ノワールは「一つ貸しだからね」と、まだ毛を逆立てたまま、

そうひと言言う。

「で、なに?

 こっちもそう、ヒマじゃあないんだ」

冷ややかに、緑色の瞳を向ける。

「招待状…誰が出したの?」

 アキはまっすぐに、ノワールを見る。

答えによっては、帰さないぞ…という意思を持って。

「それは、ここの…ファンタジーランドの主人だよ」

ポンとそう言うと、前足を窓枠にかける。

「質問は、それだけ?」

淡々とノワールは答える。

「それじゃあ…何のために、私達を呼んだの?」

アキは緊張のあまり、舌をなめる。

「一つだけ、と言っていなかったっけ?」

ノワールは、じぃっとアキを見るけれど…

アキは真剣なまなざしで、まばたき一つせず、まっすぐに見返して

くる。

「ま、いっかぁ」

ノワールは、案外あっさりと引き下がる。

「わからないけど…たぶん、ここの主人には、何か考えがあるん 

 だろうねぇ」

他人事のように、サラリと答えた。

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