第77話 手ごわいアイツ

「えっ」

 カガリが思わず、声をもらす。

「じゃ、ノワールが?」

カガリはグッと、膝を引っ込めようとする。

「残念でしたぁ~ボクじゃないよぉ」

カガリにしがみついたまま、ノワールはアキに向かって、話しかける。

「それなら…どういうこと?

 ケイタは、どこに行ったというのよ」

アキは険しい顔をして、ノワールに噛みつくようにして言う。

「さぁ~どうなんだろうねぇ」

 だがノワールは、ノラリクラリと答えると

「まぁ、がんばってみて」

その割りには、気のない素振りで、前足をヒラヒラと振った。


「何なの?その態度は」

 アキとしては、そういう態度が、とにかく気に入らない。

「アキちゃん」

相変わらずカガリが、アキの腕を引っ張る。

「大丈夫よぉ」

アキはヘラリと笑って、カガリに向かって、元気よく答える。

「あっ、そうだ」

 ふいにアキが、思いついたように、ノワールの方を向く。

「それなら、ゼペットじいさんって…どこにいるの?」

いきなりアキが聞く。

「えっ?」

その時初めて、ノワールが反応した。

「それって、誰から聞いたの?」

明らかに、さっきとは違う反応だ。

「誰だと思う?」

思わせぶりに、アキはノワールをじぃっと見る。

「さぁ?」

のらりくらりと答えると、ノワールはカガリの膝の上で、

グルーミングを始める。

「それはねぇ、ピーターよ」

ささやくように、アキが答える。

「ふぅーん、ピーターかぁ」

だが、思ったよりも、ノワールの反応が薄かった。

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