第74話 疑心暗鬼

「その…バカ正直なところが、いい所なんだけどね」

 思わずアキはつぶやく。

何だか、お母さんの気持ちがわかるような?

(いやいや、それは違うでしょ)

「でも…ホントーに、そこにいるのかなぁ?」

カガリは、心配そうにつぶやく。

 それは、そうだ。

さっきからずっと、カラブリ続きの状態だ。

「あの、カブ頭もいないし。

 しゃべる黒猫も、どこかへ行っちゃったし」

ポツンとカガリがつぶやくと、

「ホント、そうよね!

 私達…まんまと、だまされているのかもよ」

ふいにアキは、そう言い出した。


 まったく脈絡もないことだけれども、よくよく考えると、

おかしな話だ。

「ちょっと、ノワール!どこにいるのよぉ」

いきなりアキが、空に向かって、大きな声を張り上げる。

「ちょっと、アキちゃん!

 いきなり、どうしたの?

 ビックリするじゃない」

カガリがアキを突っつく。

アキが煮詰まってしまって、おかしなことを口走っている…

と思ったのだ。

 だがアキは、クルリと振り返ると

「だって、そうでしょ?

 私達をここに呼び出しておいて、放ったらかしなんだもん!」

手をバタバタと振り回す。

「あっ、アキちゃん!

 暴れたら、危ないんだってば!」

カガリは控えめながらも、アキを何とか落ち着かせようとなだめる。

だがアキは、ますます手足をバタバタとさせて怒るので、馬車が

ガタガタと大きく揺れた。

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