第73話 お人好しのピーターパン

 ティンカーベルは、とても小さい。

なので、捕まえるのはおろか、見つけるのも一筋縄ではいかない。

金色の細かな筋を頼りに、追いかけるしかない。

幸いアキが、ハークション、ハークション!と、盛大にクシャミを

するので…

「まるで私…ティンカーベルの探知犬みたいね」

鼻をグシグシさせながらボヤく。

「だけど…あの子、協力してくれるのかしらねぇ」

 何しろティンカーベルは、ピーターの言うことしか聞かない、と

いうようなのに…

「ボクにまかせて!」

 ヒュン!

緑色の影が、アキたちの側をすり抜けた。


「ねぇ、ちょっと…信用してもいいの?」

 アキはピーターがあまりにも快く出て行ったのを、不思議に思う…

ピーターは本当に、わかっているのだろうか?

普通 自分のパートナーとでもいうべき存在のことを、つい最近出会った

ばかりの子供たちのために、追いかけたりするものなのだろうか?

(ピーターって、バカが付くほどのお人好しなの?)

 すでに、緑色の姿が見えなくなった方向を、目で追う。

それは、カガリも同じように思うようで…

「ピーターパンって、こんな男の子だったのかなぁ」

不思議そうに、アキに向かって聞く。


「さぁ?」

 アキは、頭をかしげたままだ。

「でも…何となく、ケイタに似ている…と思わない?」

妙なことを言う。

「どこが?」

ピーターに、失礼だよ。

「性格!」

「そうかなぁ」

うーん、とカガリは考え込む。

「似たような、似ていないような?」

「そうだよ!」

説き伏せられるように、畳みかけられると、カガリもうなづくしかない。

ケイタもそういえば、人の言うことを、丸のまんま信じてしまう

タイプなのかもしれない。

「ふぅーん」

カガリはニヤッと笑って、アキを見つめた。

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