第67話 形勢逆転!

「あっ」

 思わず飛び出したものの、自分の背後には気が付かなかった。

ユウジの背中に、銃のような固いものが突きつけられている。

ヒッヒッヒッ…

不気味な声で、その男は笑う。

「飛んで火にいる夏の虫とは、よく言ったものだな!」

勝ち誇ったように、そう言うと…

「そうだな、よし、おまえ!

 せっかくだから、お前を先にしてやろう」

グイグイと、背中を鋭い切っ先で、突いて来る。

おそらく当たっているのは、フック船長のかぎ爪だろう。

「しまった!」

悔しそうに、ユウジがつぶやく。

「ショータ、アキ!後は、頼んだぞ」

そう言うと、渡してある板に、足をかけた。


「そうはいくか!」

ヒュン!

目の前を、緑色の影が横切る。

ピーターだ。

「おやぁ、船長!

 この帽子、いらないのかなぁ?」

すかさずティンカーベルが、羽根飾りのついた帽子を、海へと

放り投げる。

「あっ!」

放物線を描いて、ボチャンと音をたてて、海に落ちる。

「貴様!」

毎回毎回、邪魔をして!

船長は真っ黒な髪を振り乱して、剣を取り出すと、帽子の落ちた

方へと飛び込む。

「あぁ~」

だが、あにはからんや!

帽子が落ちた方向には、因縁のあのワニが、口を大きく開けて

待ちかまえている。

「貴様!図ったなぁ~!」

凄まじい怒声と共に、激しい水音が響き渡った。


「大丈夫だったか?」

 ピーターはすぐに、ウェンディに近付く。

「ピーター!」

目隠しを外してもらうと、ウェンディはピーターに飛び付く。

「おっとっとぉ~

 ワニのエサになるから、危ないよぉ」

ふざけたように、そう言うと…

ピーターはひょいっと、ウェンディを抱え上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る