第65話 しまった!

「あっ!」

 一瞬のすきをついて、フック船長に逃げられてしまった。

「ちょっと、ねぇ、どうするの?」

予想外に、船長がすばしっこかったので、アキはすっかり動揺している。

「ヤバい!ピーターのことを憎んでいるから!」

アキに向かって叫ぶと、

「わかったわ」

すぐにアキは観念して、うなづく。

「とにかく、追いかけましょ!

 ケイタのことも、聞き出さないといけないし!」

何しろ、ピーターがここに連れて来たのだ。

もしかしたら、何か知っているのかもしれない…

「そうだなぁ」

本当のところは、厄介なことに、首を突っ込みたくはないのだけれど…

ここまで来た以上、見て見ぬふりは出来ない。

瞬時に、ショータは考える。

「よし、じゃあ行くぞ!」

「みんな、その辺の武器になりそうなもの、拾って!」


 運は、アキたちを見離してはいなかった。

まだ、フック船長の手下たちに、見つかってはいないのだ。

「ねぇ、舳先って。どっち?」

だがアキは、こういう海賊船に乗るのは、生まれて初めてなのだ。

どっちに向いて行けばいいのか、正直なところは、まったくわからない。

「うーん、あっちじゃないかなぁ?」

ショータはグルリと見渡して、前方を指差す。

「さすがショータ!」

「わかった」

「とにかく行こう」

アキとカガリは、その辺に落ちている棒を拾い上げる。

ショータは、火かき棒を、ユウジは斧を拾い上げると、乗って来た

乗り物に駆け寄る。

「カガリちゃん、大丈夫?」

アキが手を差し伸べると、

「うん、大丈夫」

カガリは大きくうなづき、アキと向かい合わせに座った。

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