第63話 フック船長、登場

「おい、何を寝ぼけたことを言っているんだ?」

 口ひげを、かぎ爪のついた手で、撫でるようにすると…

じろじろとアキたちを見比べる。

「ふぅーん、お前~

 ウェンディとかいうガールフレンドがいながら、また他の女の子に

 手を出したのか?」

それも、二人も!

悔しそうに、ピーターをにらみつける。

だが、ピーターの肩に止まっていた妖精が、船長の前をヒラヒラと

飛び回ると

「違うわよ!

 ピーターの彼女は、私一人だもの!」

抗議するように、ブンブンと船長の周りをグルグルと飛ぶ。

「あ~うるさい!

 このちっこいヤツ、どうにかしてくれ!」

かぎ爪を振り回して、何とか仕留めようとしている。

「ご冗談を!

 あんたなんて、怖くないもの!」

ヒュン!

ティンカーベルは、目にも留まらぬ速さで飛び上がると、フック船長

のかぶっていた帽子を、ひょいと取り上げる。


「おい、止めさせろ!

 それよりも、ピーター!

 お前の大事な人が、大変なことになっているのに…

 こんなことをしていても、いいのか?」

 ニヤリと大きな口をゆがめると、濁った目で、ジロリとアキたちの方を

にらみつける。

「えっ?大事な人って、だれ?」

アキが思わず声を上げると、ピーターを見上げる。

ピーターはそれには答えず、フワッと舞い上がる。

「ピーター!

 だまされては、ダメよ!

 船長はあなたのことを、いつも狙っているのだから!」

ティンカーベルはそう叫ぶと、帽子をかかえたまま、飛び去って行く。

「ちょっと!本当に、大丈夫なの?」

アキも加勢しようと、馬車に飛び乗ろうと近付いた。

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