第61話 海の上…

 どうやらショータも、何かに気づいたようだ。

「もうすぐ、答えがわかるわよ」

なぜかカガリは、嬉しそうだ。

「へぇ~」

カガリのイキイキとした顔を見ると、何だか意外な一面を見付けた

ような気がする。

「海の上ってことは、船?」

馬車の窓枠につかまりながら、真下を見下ろして、アキは聞く。

ガタガタと、馬車がしきりと揺れるので、カガリも柱につかまっている。

「ねぇ~ホントに、こんな所にケイタがいるのぉ?」

悲鳴の代わりに、そう叫ぶ。

「さぁ~わかんない」

ピーターの代わりに、カガリが返した。


 さすがに、メリーゴーランドの乗り物は、長時間空を飛ぶ目的で、

作られたものではない。

ガタガタと激しく揺れて、さらにガガガ…と急降下をする。

そのたびに、ガンガンと馬車の天井に頭をぶつけて、キイキイと馬車が

きしむ。

キャー!

ついに耐え切れなくなり、アキとカガリは、互いに抱き合う。

「だ、大丈夫かなぁ?」

カガリが真っ青な顔になり、アキに尋ねる。

「さぁ?でも、ペガサスよりは、怖くないかも」

若干強がりを言うように、アキは平然としてみせる。

けれども体は、しっかりとカガリにしがみついている。

「動かない方がいいわ。馬車のバランスが崩れる」

そうカガリに言い聞かせると、カガリはうんうんと大きくうなづく。


 外を眺める余裕は、二人にはない。

ショータやユウジのことを、気に掛けるゆとりもない。

この瞬間が、永遠に続くのか…と思っていたけれども。

ゴンという凄まじい振動がきて、ようやく馬車はどこかに、着地した。

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