第56話 緑色のアイツ

「ちょっと!アキちゃんに、馴れ馴れしく近付かないで!」

 なぜかカガリが、アキの前に立ちふさがる。

「なになに?なんだよぉ~

 この緑色の男は…だれ?」

ユウジは、二人の間に割って入る。

「緑色の男って…ずいぶんな言い方だなぁ。

 お前こそ、何者だ?」

腰に手をあてて、ピーターという男は、ユウジの前に詰め寄る。

「何者って…ボクたちは、ケイタを探しに来たんだ」

まさか、お前がさらったんじゃあないだろうな?

ユウジは思い切り、胸をそらして、ピーターの前に立ちはだかった。


「ちょっと!ケンカをしている場合?」

 アキが、ユウジをたしなめる。

「ピーターっていうの?」

アキがあらためて、緑色の男の子を、頭の先から爪の先まで、じっくりと

見つめる。

「そう!ボクが、ピーターパンだ!」

堂々と腰に手をあてて、誇らしげにそう言う。

「へぇ~やっぱり、そうなんだ」

思わずアキは、ニッコリと笑う。

このファンタジーランドの、アトラクションの一つに違いない、と思ったのだ。

「私たち、友達を探しに来たの」

出来るだけ丁寧に、そう話しかける。

ピーターは、緑色の帽子に手をやると、

「友達?キミたちの?」

羽根の部分をいじって、アキをじぃっと観察をする。

「そうよ、ユニコーンに乗った男の子を、探しているのよ」

この子は、本当に知っているのだろうか?

アキは彼の表情の変化を、見逃すまい…と視線を向けた。

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