第54話 まさか、あの妖精?

「姿を見せなさいよ!

 挨拶しようにも、出来ないでしょ」

 アキは果敢にも、見えない相手に話しかける。

「あら!それは、失礼!」

 すると、金色の粉がフワフワ~と舞い降りて来ると、トンボのような

小さな羽を背中につけた、小さな女の人が姿を現した。


「あっ」

「えっ?」

「まさか…ティンカーベル?」

 カガリが、小さくつぶやく。

「ティンカーベル?」

思わずユウジが、頭をひねる。

「そうよ、ティンカーベルよ!ピーターパンの!」

いつもは、無口でおとなしいカガリが、なぜだか目を輝かせて、そう言う。

「え~っ!でもそれって、おとぎ話だろ?」

ユウジが思わず、言い返す。

こんなところに、いるわけがないだろ、とカガリに向かう。

だがカガリは、それを無視して、

「妖精は、いるのよ!」

なぜか、強い口調で言う。

「え~っ!」

いつもは、アキの陰にひっそりと隠れて、ろくに話をしたりはしない

カガリなのに…

どうした?

いつもと、違う…

ユウジは、目を白黒とさせる。

「確かに。昔からよく、目撃したという話は、聞くけどねぇ」

まぁ、ホンモノかどうかは、別としてね、とショータはとても冷静な顔つきで、

淡々と付け加える。

「日本にも、コロボックルとか、小さな生き物とか、昔から聞くよね」

「アリエッティ?」

「小さなオジサン?」

アキがニヤニヤしながら、二人をまぜっかえす。

「親指姫かなぁ?」

さらに、カガリに向かって、アキが言うと…

「私をそんな、地面をはいずり回る生き物と、一緒にして欲しくないわ」

その妖精は、見た目に似合わないくらい、大きな声で言い返した。

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