第42話 リンゴの木の下で

 本当にこの人たちって、人を驚かすのが趣味なのか?

アキはブスッとして、ソッポを向く。

そんなことは、まったく気にすることなく、カフはスッと手前を

指差すと、

「さぁ、ゲートへどうぞ」

いきなりイヤミなくらいに、丁寧な仕草で、カフは深々と頭を下げる。

(何なのよ、こんな時だけ!ホント、調子がいいわね)

心の中で、つぶやく。

ユー子さんが言っていた仲間というのは、誰なのか…

急に気になって来た。


「まぁ、まぁ、まぁ~」

 ケイタが異様なくらいに、ニコニコしながら、アキとユウジの背中を

ドンドンと押して歩く。

「とにかく入ろうぜ!

 ここって、すごいんだぞぉ~」

興奮気味で、唾が飛びそうな勢いで言う。

 アキは何だか、嫌な予感がする。

「まさか、ケイタ…中に入ったの?」

チラリ…とケイタを見る。

「へっ?」

ケイタはどんぐり眼になると、みんなの視線とかち合う。

「ちがう、ちがう!

 入ってないよ、全然!

 ちょこーっと、りんごの木の上に上っただけ」

ブンブンと大きく手を振ると、へへへと笑う。

「はぁ?」

思わずアキが、声を張り上げる。

「それって、入ったってことでしょ?」

呆れかえるアキの声に、ケイタは目玉が飛び出しそうなくらい、

大きく見開くと

「違うよぉ~入り口の近くにある木に、上っただけだよぉ」

ますます大きく手を振る。

これは、怪しい…

アキには、ピンとくる。

「それをね、入ったというのよ」

大方、リンゴでも齧っていたんでしょ?

はぁ~と、大きくため息をつく。

「ごめんなさい」

ケイタはしょぼんと、肩をおとした。


「まぁまぁ、お二人さん…

 そんなことで、揉めないでよぉ」

 カフがあわてて、二人の間に割って入る。

「それって、門の側だから…

 正確には、まだ中には入っていないよ」

そう付け足すので、かえって怪しい。

アキはジロリと、カフをにらみつける。

「そう?」

しょっぱなから、ケンカするのもアレだから…

そう何とか、気を取り直す。

「まぁ、いいわ」

すんだことを、ごちゃごちゃ言っても、仕方がない。

アキはあらためて、ケイタに目をやると、

「で、どうだった?」

腰に手をあてて、そう尋ねた。


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